ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

あなたは、「がんそん」を覚えているか?

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こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

先日、話題のノンフィクション『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』を読み終えました。

感想文は、また別の機会で書こうと思うのですが、この本の主役である栗城史多さんの人物像を思い浮かべていると、ある人のことが私の記憶のアルバムから引き出されました。

それがこのブログのタイトルにもなっている・・・がんそん。

 

 

がんそんって何だ?

「がんそん」と聞いて、「ああ、あの人ね」「懐かしい」とならない人のために少し説明をしておきましょう。

2018年、当時は景気もいい感じで、新型コロナウイルスの気配なんぞ微塵もなく、SEOも個人ブログに優しく、「ブログで稼ぐ」や「オンラインサロンでブイブイ」が人によっては出来ていた時代でした。

就職もしやすかったし、同じく転職も容易でした。

働き方改革とか言い始めたけど、まだまだブラック企業もわんさかいるし、残業規制の法改正の施行前だったということもあり、「自由に働く=会社員じゃダメ!会社を辞めてフリーランスに!」みたいなことを言う人も多くいました。

辞める勇気と知識のない人向けに退職代行なんていうのもチラホラ出始めてきたころでしょうか。

 

そんな中、がんそんは急にSNSに彗星のごとく現れました。

「入社当日に会社を辞めた」というツイートをぶちかましながら。

 

そのツイートは、色々な人から「けしからん」「アリじゃね?」と賛否両方を集め、がんそんは一躍(一部の界隈で)有名人に。

ちなみにその前の会社も2日で辞めたらしい。

 

そこから、彼女を捨てた発言とか、ネットで新しい彼女募集したり、オンラインサロンやったり、デザイナーに1万円で頼み放題やったらWin-Winじゃね?とか発言してちょっとした話題になったり、ポルカで食費を募ったり、俺の夢はフィットネスを日本中に広げることだと声高に叫ぶなどなど・・・まぁ色々やっていました。

もう記憶も曖昧だけど。

 

そして、突然の「東大入ろうかな」発言。

外野からやいやいと色々な意見が飛び出していました。

 

私も、Twitterでやり取りをしたし、その中で思ったことをブログに書きました。 

www.dokudamiyoshiko.com

 

結局、数回「勉強を教えてもらいました」という報告をアップして、その後どうなったのかは分かりませんが、東大に入学できたということは100%ないでしょう。

これだけは断言できる、絶対に、ない。

その後は、バイトで食いつなぎながらYouTubeをはじめたり、謎のモテ系(?)メディアを作ったり、オンラインサロンを運営していたようですが、気づいたらTwitterアカウントごとすっかり消えていました。

 

 

がんそんと似た空気を感じた

さて、そんながんそん。

私が『デス・ゾーン』を読みながら、そのことを思い出したのは、彼と栗城さんがよく似ていると思ったからです。

 

東大に入るという発言をしていた時に、私も大学受験経験者として、ちょっと気にして見ていたし、多少のやりとりをしたんですね。

ざっくり言うと、「ものすごく努力すれば不可能ではない」「10年はかかる」と言ったのですが、「難しく考え過ぎ」「もっと簡単に考えなよ」「最速かつ現実的にいきます」「自分は入学できる」などなど、根拠のない自信を振りまくばかりで、話になりませんでした。

 

ある時期までの栗城さんも、「夢は、十回口にすると、叶う(十+口=叶)」なんてことを言って、大したトレーニングもしていなかったけれども、自信満々だったということが書かれていました。

その、薄っぺらくて、計画性も何もなく、努力もそこそこのくせに、「出来る」と断言する・・・その軽さが、重なったのです。

 

 

がんそんは消えたけど

がんそん東大受験騒動の時に、根拠なく「出来る」と言い切るがんそんの周りには、なぜか根拠なく「がんそんなら東大に入れるよ!」「入学おめでとうって先に言っておくね(そうすると言霊で入れるから)」と言う、謎ポジティブな方が沢山いました。

 

ああ、それも栗城さんと重なる・・・

 

ポジティブに考えればどうにかなる勢の、何も考えない応援に力をもらって、出来ると思い込んで行動する。

それは別に悪いことではないけれど、時にはその結果が、「死」を招くこともあるのです。

栗城さんの場合は、エベレスト登頂なんて、リアルに生命の危機が満載なところに行っちゃったから。

何でも簡単で軽く考える若者が、多くの人を巻き込んで、スポンサーを獲得出来て、称賛と炎上の両方の激しい光を浴びてしまって、もう戻れなくなってしまった・・・

 

私は怖くなったのです。

もしもがんそんに、人をもう少し魅了する力があって、誰かからお金を引き出す力があったら。

ひょんなことから大金をゲットしたり、ネットの片隅ではなくもう少し日の当たる場所で有名になってしまっていたら。

・・・彼は栗城さんのようになってしまっていたかもしれない。

そうなってしまっていたら、面白半分でがんそんを応援していた人たちや、苦言を呈していた人たちは、どう思うだろうか?

「自分ががんそんを狂わせた」と思ってしまったかもしれない。

それは、私自身も。 

 

 

がんそん系はどんどん出てくる

がんそんはネット上から消えてしまい、私たちの記憶からもすっかり消えてしまいました。

でも、これからも、彼のような、バカなことばかりやって周りを笑わせてきて、ポジティブで、何事もノリと勢いで行けると考える人は、どんどん出てくるでしょう。

そして、それに対して「あなたならできるよ」「やっちゃえ~」みたいなポジティブな応援をする人も、「無理に決まっている」「やめておけ」と忠告をする人も、バカにする人も、きっとまた出てくる。

 

でもそうやって、どんな言葉であろうと、騒ぐことで担ぎ上げられて、もう戻れないようなところまで行ってしまう可能性もあるんだ。

ネット上でコメントしているだけでも、その神輿に手を添えてしまうこともある。

 

その恐ろしさを、忘れてはいけないなと思ったのでした。

 

 

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