こんにちは、ドクダミ淑子です。
先日、トレンディドラマみたいなラブストーリーな小説を読みました。
読み終わって、「そういえば買っていたな」と思い出した積読の本を引っ張り出しました。
小説を読むというのは、一度離れてしまうとそのまま疎遠になってしまうけれども、何かのきっかけで読み始めると、また次!次!となる。
そしてブログの更新が滞る。
私がブログの更新していない時は、だいたい「ハマっている小説等がある」「調べることが必要な記事をコツコツ書いている」「寝落ち」のどれかですね。
・・・んで、読み終わったのは、こちら。
|
どんな内容なの?
公式サイトによると、こんな内容です。
「おいしいね」を分かち合える、そんな人に出会ってしまった――
直木賞作家が描く、三角関係未満の揺れる女、男、女の物語。「入念な下ごしらえがなされた滋味深いおばんざいをいただいた。そんな後味の残る小説だ」阿川佐和子
恋はもういらないというデザイナーの夕香。かつて夕香の職場でバイトをしていた正和。恋人の正和よりも研究一筋の、大学院生の華。偶然再会した夕香と正和はたびたび食事を共にするうちに、夕香の暮らす京町家で同居することに。理由は食の趣味が合うから。ただそれだけ。なのに、正和は華にどうしても打ち明けられなくて……。
揺れ動く、三角関係未満の女、男、女の物語。
3人の主人公の視点で代わる代わる描かれながら、物語がどんどん進んでいく、という形の小説です。
塩むすびとフライドチキン
読んでいて、まず私は「ずるいな」と思った。
3人の主人公のうちの男性、正和に対して。
一緒に食事をする仲の夕香には丁寧な食事を作ってもらったり一緒に食べたりして、時々会う(会える)華とはフライドチキンを食べてセックスし、それぞれに別の女の話をしない。
浮気じゃないし、彼女がいるのを申告しなければいけないわけじゃないんだけど、とにかく「ずるい」と思ってしまった。
「結果的に」だけど、食欲と性欲を別の女で満たすところが、そして本人にそういう「悪気」みたいなのがないのが、とても、ずるい。
踏み込まない人達
ただ、ずるいのは正和だけではない。
夕香だって「なんとなく世話の出来る相手」がいる方が好きなタイプだし、華だって「間女」が出てくる前は、彼氏のことよりも明らかに仕事を優先していて、踏み込まれたくない時には仕事を口実にして逃げたりもしていた。
それぞれが、それぞれのことを都合の良い存在として扱い、なんとなくバランスが取れていたのが、距離が近くなったことで崩れ始める・・・そんな物語として読んだ。
そして不思議なくらい、お互いが踏み込まないのだ。
好きな食べ物のことは知っていても、お互いの下の名前を知らない。
下の名前で呼び合っていても、どんな仕事をしているか知らないし、食べ物の好みも知らない。
物語の後半で、このことは指摘されているんだけれども。
たしかに、大人になってからの人間関係って、「好み」「趣味」って、知らなくてもやっていける。
けれども、距離が近づけば近づくほど、「知っていた方がいいこと」になる。
相手を喜ばせるためにも。
それぞれの女達には、踏み込みまくってくる女友達がいて、お互いの好みももちろん知っているし、この面倒臭いくらいにうやむやな「恋愛(同居)」についてガンガン意見をしてくる。
それは「女同士」だから出来るものなのか?
それとも、「壊れることを恐れない」もしくは「壊れないと強く信じられる」関係性だからなのだろうか?
読みながら、「男と女」の関係なんて、本当に「脆い」ものなんだろうな・・・なんてことを思った。
それは私に、何でも言い合える友人がいるからかもしれないけれども。
崩れた先にあるもの
前半は、そんな感じで「三角関係」が続いていく。
でも、中盤~後半にかけて、その三角関係はどんどん崩れていく。
その先にあるものは、何か強固な繋がりみたいなものになるのだろうか・・・
・・・と考えながら、とにかく美味しい描写を読まされる、というのが私の読書体験だった。
色々と舌なめずりをしながら読んでいたけれども、レーズンがたっぷり入った、ぶどうパンが食べたくなった。
こちらもどうぞ