こんにちは、ドクダミ淑子です。
先日感想を書いた『彼女は頭が悪いから』の中で印象に残っているシーンがあります。
それは主人公(のちの被害者)の美咲が、駅のホームの鏡の前でマスカラを塗っているのもう一人の主人公である、つばさ(のちの被疑者)に見られたシーンです。
私たち読者は、2人それぞれの、そこに至るまでの状況を見ることができますから、美咲がどんな経緯で外でメイクをしていたのかという事情は分かります。
でも、つばさにはその事情というのは、当たり前だけれど見えないのです。
だから彼は、「『ああいうとこ、ちがう』とかんじ」てしまった・・・となるのです。
見えるものが全て、なのだ
私たちが何か失敗をしてしまう時には、だいたい理由があります。
疲れていたから、時間がなかったから、実はその前の日にこんなことがあったから・・・などなど。
でも、いくら事情があろうとも理由があろうとも、相手にはそれは見えないわけです。
時と場合によっては、その事情や理由をきちんと説明して相手に伝わることもあるでしょうが、多くの場合はそういった事情を知ることはなく、ただ「失礼な人」「仕事のできない人」「マナーがなっていない人」という印象だけ与えて終わってしまいます。
ある人の心の内に、ものすごい情熱があったとしても言葉が一言しか出なければ、その言葉を受ける人は「その一言」だけを受け取ることになります。
それが試験だったり面接だったりプレゼンの場だったりすれば、その人の考えは「その一言」で終わってしまいます。
試験官はその一言で判断をしますし、後からどれだけ言い訳をしても、本番で言えなかったら失敗に終わってしまうでしょう。
だから、見えるものが全てで、「気持ち」ではなく「その表れである、言葉や行動」が全てなのです。
見えないものを見ようとして
見えるものが全て。
確かにその通りなのですが、それで終わってしまったら、結局あの小説の中の相手の気持ちを理解しようとしない東大生と同じになってしまいます。
「筆者の気持ち」なんていくら考えても本当の答えがどうか分かりませんが、それでも考え続けるべきだし、相手の気持ちだって100%分かり合うことは難しいけれども、わかろうとする努力はすべきだと思うのです。
NHK Eテレの番組で「u&i」というものがあります。
小学生が、日中にあったトラブルについて、夜寝ている本人の心に問いかけて「どういう意図があってそういうことがしたのか?」と質問し、見えなかったその人の特性であったり個性だったり、時には障害(に近いもの)だったりを理解するのです。
「やる気がないように見えた」と言う人も、話を聞いてみると、注意力が散漫になってしまう性質だったり・・・と、状況を知ってみると全然思うことが変わる。
良い番組だなぁ・・・と思いながら、時々見ています。
「色々な人がいるから」で片づけない
私もよく言ってしまうのですが、世の中には色々な人がいます。
考え方も色々だし、もしかしたら何も考えていない人もいるかもしれません。
最近だと反ワクチンの人の思考回路って、義務教育をわりときちんと受けてきた私の「常識」をゆうに飛び越えている人達もいるなぁと思っています。
でも、「世の中色々な人がいるから・・・」つまり、「色々な人がいるから私が理解できないこともあって当然だ。だから理解しようとしない」で終わらず、できるだけその人が、どういう意図でその発言をしているのか、どういう思考回路でその考えが出てくるのかを理解しようと努めないといけないなと思っています。
お互いがお互いを 分かり合う努力 をしなければいけない
分かり合う努力をし続けたい。
ただしこれを貫くのに、もう一つ難しいことがあります。
分かり合う努力をして分かり合えるのは、お互いがお互いのことを分かり合う努力をした時だけなのです。
そして、よくあるのは、「難がある人」の方が相手を理解する努力をしないということです。
例えば、反ワクチン派の人は、ワクチンを打つ人の思考回路を理解しようとはしませんし、嫁姑問題だと姑が嫁の立場や考えを理解しようとせず「こうに違いない」「私はこう思う」と勝手に思い込んでしまうのです。
こういう、勘違いや思い込みで走り込む人は、そもそも言葉や行動など目に見えるものすら見えておらず、自分の頭の中で考えられる範囲でしか考えていないのです。
「私はこう考える、だから相手も同じように考えるはずだ」という人は、見ている見ていないの問題ではありませんね。
だから、分かり合う努力をしようとする人は努力するけれども、相手がその努力をせず、結局お互いを分かり合うことは不可能・・・なんてことが大半なのです。
そうなると、「分かり合う努力をすること自体が無駄」となりそうなんだけど、でもやっぱり、努力はし続けないといけない。
努力をする方が損をする問題なんだけれども、その「損」を取れる人が、人間的に素晴らしい人なんだろうなと思うし、私もできれば「そちら側」でありたいなと思うのです。
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