こんにちは、ドクダミ淑子です。
仕事のことで、ある時ふと思い出すことがあります。
大抵は、「あの時もっとああしておけばよかった」みたいな後悔なのですが、時々「あの時どうすればよかったのだろう」と考えることもあります。
まだ、私の中で答えが出ていない、ということです。
外注デザイナーさんとのいざこざ
それは、私の元同僚で少し年上のデザイナーさんとの仕事での出来事です。
別のクライアントが参加するイベント向けの印刷物を依頼していて、そのイベントでの制作物には細かい規定があったので、それを渡して作成してもらっていました。
「細かいですが、よろしくお願いします」
「俺だってこの業界長いからね、わかってるよ」
そして、印刷されたものを見ると・・・間違っているじゃないですか。
仕方ないので間違いを指摘して、再度印刷をするように依頼すると、そのデザイナーさんは怒り出したのです。
「確かに間違えたのは俺だけど、『印刷し直してください』っていうのはちょっとおかしいんじゃないか?」
なぜ・・・?
その後、私の会社の方で印刷費用を出せないか交渉するように言われました。
「それで、ドクダミは印刷前にチェックしたの?」
「していないです」
「じゃあ、うちに責任ないよね?」
「はい」
「それだと、印刷代は出せないよ。うちに過失はないもん」
「そうですよね・・・」
その結果を伝えると、元同僚からはこう言われました。
「もちろん、俺のミスだということはわかっているよ。でもその中で、ドクダミが『今回はうちがフォローしますんで!次もまたお願いします』って言ってくれれば、お宅への信頼度が上がって、俺からも別のクライアントを紹介しようって気持ちになったかもしれない。そういう信頼を、この印刷代数万円でなくしてしまうってことだよ?いいの?」
なぜなのだ・・・?
なぜ、ミスしたのはそっちなのに、当然のようにこっちがその費用を被るべきみたいな話になっているのだ?
ミスと補填と信頼と
確かに、彼が言うように、彼のミスをこちらでフォローすれば、彼からの印象は良くなるだろう。
でも、その先の「クライアントを紹介するかもしれない」みたいな、見返りは本当にあるのか?
というか、件の印刷物のクライアントを彼に紹介したのは、私なんですけど?
会社なら、経費で数万円くらい簡単に出ると思っている?
我が社は結構ケチなんだよ?
片道2時間かかる場所への高速利用を申請しても却下されて一般道で行けと言われるんだぞ?
どうすればよかったのか?
答えは出ないままです。
そんな時に、スーパーでこんな会話を聞いてしまいました。
「店長、お客様が駐輪場で卵を落としてしまったと言われて・・・」
「ああ、じゃあ新しいのあげて!」
顧客が割ったのに、敷地内ってだけで新しい玉子を貰えてしまうのか・・・
ああ、あの時の私は正しかったのだろうか?
カフェラテで思い出す
そして先日、またこの話を考える機会がありました。
ある日の昼下がり。
私は子どもが寝ている間に、買い物に出ていました。
午前寝が短めだから、昼寝はがっつりするはず。
ドラッグストアに行って、粉ミルクと紙おむつを買って、ついでにおやつを買おうと家を飛び出しました。
そして、買い物を済ませて、おやつをどこで買うかを悩みだしました。
今日の午前はずっと寝なくて抱っこばっかりでハードだったから、ちょっと甘いものを。
チョコチップの入ったスコーンと、カフェラテがいいな。
私はカフェインレス生活をしているので、コーヒーを買うお店は限られています。
スタバ・・・ちょっと歩くし、待つこともあるだろうな。
子どもは今までの経験上たぶん起きないけれども、万が一私がスタバに行ってほくほく気分で帰った時に泣いていたら精神的ダメージを食らうから・・・近くのローソンにしよう。
そんな風に考えて、ローソンへ行きました。
チョコチップスコーンをレジに持っていき、カフェインレスのカフェラテ(M)を注文しました。
店員さんはカフェインレスの注文を受けたのは初めてだったようで、バーコード付きの注文票を取り出し、私が「これです」と指をさす。
「あちらのカウンターからお出しします」と言われて、30秒ほど待つとカフェラテが出てきました。
ああ、フタは自分でつけるのね、砂糖入れる人もいるだろうしな。
そう思いながら、紙おむつをぶら下げている手が使えず片手だけでフタを付けようとしたら・・・バシャーン!とカフェラテをこぼしてしまいました。
店員さんに謝りながら、一緒に床を拭き、片付けが終わったところで、店員さんが切り出しました。
「どうしますか?」
中身が10分の1程度残っているカフェラテのカップを指して、「どうしますか?」と言われても・・・・と思いながらも、「もういいです」と言って、しょんぼり気分で店を出ました。
ああ、カフェラテ飲みたかったな・・・家でコーヒーを淹れよう。
まぁ、こういう日もあるさ、また今度カフェラテを頼もう、スタバで。
「どうしますか?」って言われてもなぁ・・・スタバだったら入れ直してくれたかもしれないし、そもそもスタバではフタは付けてくれるんだよな。
しかしここはローソン、フタは付けないのがマニュアル、そしてこぼしたのは私だ。
しかしこのしょんぼりした気分、そしてローソンが少しだけ嫌いになったこの気持ちは、どういう風に説明すればいいのだろうか・・・
・・・そんな時に、先ほどのデザイナーさんの話を思い出したのです。
商売と好感度の狭間
おそらく冒頭のデザイナーの彼も、自分が悪いことくらい、わかっているのでしょう。
でも、その自分のミスに対して、「あなたのミスですからね、お金はあなたがきっちり払ってくださいね(ピシャ!)」という態度でいたのが良くなかったんだろうな。
たしかに、彼の言う通り、自分が悪いけれどもそれをカバーしてくれると、その人に対しての好感度がめちゃくちゃ上がる。
私もカフェラテを入れ直してもらったら、ローソンのことを今までよりも好きになっただろう。
それは理屈ではなくて、「私のことを思いやってくれた」という、ただの感情論で。
でも、それは同時に、店側が損をするのだ。
私のように週に1回程度来店する客のために、カフェラテ1杯であっても融通を利かせることに、あまりメリットはないだろう。
だから、いくら私が凹んでいようとも、自分の過失でカフェラテをぶちまけた人に何もする必要なんてないのだ。
ルールを統一すること
営業をしていると、この辺の「融通」の話で迷うことは多い。
私の会社では、「担当変更」「引継ぎ」はしばしばあって、売上の低い顧客は若手に、売上の高い顧客はベテランに、ベテランが育ててある程度ルーティンで回るようになったらもう少し若手に・・・などと担当変更をしながら、会社全体でバランス良く顧客を担当し売上を担保していこうという考え方だ。
そうすると、時々ぶつかるのが、「前の担当はここまでしてくれたのに」という話。
そういうので出てくるのは、会社のルールを逸脱した「過剰サービス」であることが多いし、そういう過剰サービスを売りにしている営業もいる(そういう人はだいたいキャラが濃く、顧客も癖が強い)。
特に若手は、そういう「前の担当は・・・」と言われた時は困ってしまう。
だから、会社としては、ルールから逸脱した過剰サービスは止めましょうとなっている。
それでも、過剰サービスを止めない人もいるんだけどね。
外注さんとの話に戻すと、会社としての判断は正しかったのだと思う。
「うちの会社は、自社の社員に過失がないことに対してお金は出しません」という方針だから。
結局、言い方の問題
ただ、それをフロントに立っている私が、言葉も口調もそのまま言ったのが良くなかったんだろうな。
たとえば、もう少し演技をして、「会社と戦ったんですけれども・・・すみません!どーしても!決済が!下りず・・・力不足で申し訳ありません(以下謝り倒す)、今回ばかりはぁぁぁぁぁ!!!」とかやっていれば、少しは印象が変わったかもしれない。
ローソンの店員さんの「どうしますか?」も、セリフが違ったら私はもう少し上向きな気分で店を出たかもしれない・・・
結局色々考えたけれども、やっぱり「ミスをした側」「とばっちりを受けた側」で言うと、「ミスをした側が責任を取るべし(といったら大袈裟な場面もあるけれども)」という意見は変わらなかった。
ただし、「とばっちりを受けた側」の言い方はちょっと気を付けると、その後の印象が変わるということは改めて気づいたのでした。
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