こんにちは、ドクダミ淑子です。
「怖いものみたさ」とか「後悔するってわかっていてクビを突っ込んでしまう」とか、人間ってなぜか「生存」「快」「効率」とは逆の方向に進んでしまうことがあります。
わざわざホラー映画を見たり、バンジージャンプをしたり・・・
なぜ恐怖や不快を味わうことがわかっていながらも、手を出してしまうのか。
そんな風に思いながら、手に取った本はこちら。
表紙からタイトルが読みづらいことこの上ありませんが、『婚活っていうこの無理ゲーよ』と読みます。
2018年に出版された、はあちゅうさん初の長編恋愛小説です。
どんな内容なの?
紹介サイトによると、こんな内容です。
「最初に彼氏を作った人が、クリスマスイブに高級ホテルのスイートルームに泊まれる!」そんな婚活レースをすることに決めた美香、かえで、舞の28歳女3人組。ひとりひとりが抱えている事情とともに、物語はジェットコースターのように展開していく。「結婚とは?」「恋愛とは?」「仕事とは?」もうすぐ30歳になる女性たちの姿をリアルに描いた、著者初の長編恋愛小説。
独身アラサー3人が、ROUND1・2をそれぞれモノローグ形式で語るスタイルです。
読みやすい本
はあちゅうさんの小説はスッと読めるんですね。
ちょっと前に読んでいた小説たちは、文章も内容も濃厚で、読むのに気力がいるのか、1日で読み切ることはできませんでしたが、休みの日の午後~夕方までで、妊婦だからと甘えつつゴロゴロしながら、メモを取りながら読み切ることができました。
例えばの話でいうと、ある人が付き合い始めるんだけど、8ページ後にはすでに違和感を感じて、更にその7ページ後では別れることが決定的になる、みたいなスピード感。
その間の心の流れというのが、あまり感じられなくて、あっさり付き合い、あっさり別れる。
この口どけの良さというか、当たり障りのなさというか、スッと読める感じが、ケータイ小説と言われる由縁なのかもしれない。
気力や体力がない時でも読める本っていうのは、今後は重宝するのかもしれない。
劣化版○○
この小説を読んで次々に思い浮かぶのは、「劣化版○○」でした。
劣化版東京タラレバ娘
私はね、マンガ『東京タラレバ娘』の1巻が出た時に衝撃を受けたんですね。
「これ・・・私だ」みたいな感じで。
当時も彼氏はいたと思うけど、かつての自分や同年代とグチグチ喋っているときの私に重なるところがあって、そこからどんどんのめり込んでいった。
同じ年代の友達ともよく語り合いましたね、赤ちょうちんの居酒屋で。
最後はちょっとグダグダを感じたけど、でも完結したときは、なんだか安心したものです。
ああ、これ以上私の心をえぐる存在がいなくなったんだな、という安心感。
・・・という『東京タラレバ娘』を思い出しました。
オリンピックまでに結婚する→クリスマスまでに彼氏を作るというレースをした3人が、不倫・仕事・婚活に奮闘・・・
でも、「劣化版」って思ったのはなぜか?
タラレバの3人みたいに、キャラが際立っていないんだよな。
ネスレのコーヒーメーカー、アヒージョ、ネイル、メゾンカイザーのパン、ホットヨガ、鎌倉で座禅・・・色々な単語が出てくるんだけど、どれが誰を表現するのかがわかりにくい。
花を飾ったり、家に帰ったらベッドの上にバッグの中身をぶちまけて入れなおしてから眠るのも、誰だかわからない。
行動がちぐはぐで、その人の性格を表すような行動になっていないのだ。
だから、どれも同じような人に思えてしまって、愛着がわかない。
唯一覚えているのは、オリーブオイルとバター好きの彼女だけど、それも最後のオチで笑ったから印象に残ってるだけ。
劣化版SATC
「なんか私たち、セックス・アンド・ザ・シティみたい!」
みたいなセリフが小説の中にあるんですよね。
まぁそうなんだけど、っていうか著者が思いっきり影響されているんだろうけど、それもなんだか「劣化版」に思えてしまう。
これはマンガやドラマと、文字のみの小説だからの差なのか、それとも著者の問題なのか。
画面の前で、ミランダになんとなく自分を重ねてしまったり、「キャリー!だめだー!!!」と叫びたくなる私は、今回は出てこなかった。
劣化版・林真理子
はあちゅうさんは、林真理子さんの大ファンだそうですね。
私は林真理子さんはちょっと苦手なので数冊しか読んだことがありませんでしたが、読みながらなんとなく存在を思い出しました。
そうそう、この、キラキラな名詞を並べる感じ。
主人公は恋に仕事にキラキラしている感じ。
そして文章からにじみ出てくる、「私、キラキラしたいのぉぉ!!私、カッコイイでしょ??」という筆者の「我」のようなもの。
小説に没頭させてほしいのに、著者がしゃしゃり出てきて邪魔をする感じ。
そういえば、林真理子さんは小説は少ししか読んだことないけど、エッセイはなぜか読みまくっていた。
タイトルが「美人」で疑問を抱きつつも、なかなかな痩せられないくせに美味しいものを食べるくだりが面白くて。
全員、はあちゅう
色々と書きましたが、この本に出てくるのは全員が著者のはあちゅうさんの分身なんですね。
- 現状打破できない、はあちゅう
- 仕事を頑張りたい、はあちゅう
- とにかく行動する、はあちゅう
3人が3人とも、はあちゅうなんです。
だから、各自のキャラが立ってこなくて、誰が誰だかわからなくて、なんとなくぼやっとした3人になる。
あ、ちなみに4人目がいるんだけど、「結婚した勝ち組妊婦」みたいに描かれていて、LINEグループを「婚活三姉妹」なんてつけて、応援してるんだかマウンティングしてるんだかなんですが、妊娠中に不倫されるという気の毒な目に遭う。
なんかこれも、何かのはあちゅうなのではないかと思ってしまう。
女友達ってなんだろう?
はあちゅうさんにとって、女友達ってどういう存在なんだろう?
そんなことを考えたときに出てきたのは、こんなエピソード。
旅行会社のコネでクリスマスイブに3万円で取れたスイートルームの話。
「舞だけ幸せになると不公平だから、そのスイートルームはみんなでシェアしよう」
「福利厚生も快く分け与えるのが友情でしょ」
「美香ってなんかくれたことあるっけ。福利厚生ないの?」
怖い・・・と思ったんですよね、この「友情」とか言いながら、クレクレしている姿勢が。
「公平」「シェア」「分け与える」とか言いながら、みんなが自分の利益を考えてギラギラしているような雰囲気が。
そして、ちょっと気乗りしないデートに、他の人から行けと言われて行って、やっぱり駄目だったと報告したときのグループLINEの返事。
「我々のエンタメのために、身体を張ってくれてありがとう」「胎教によいお話のおかげでいい子が生まれそうです」とか返ってくるんだよ?
こいつら・・・本当に仲良しなのか?
ああ、きっと彼女にとっては、女友達ってお互いに利用し合う存在なんだろうなと思った。
福利厚生をあげなくても、会社に送られてくるサンプルコスメを横流ししなくても、不幸な話をしなくても、仲良くやれる私の友達を思い浮かべて、これからも大切にしようと思った。
私も小説書いてみようかな
と、ここまではあちゅうさんの小説の感想を書いてみましたが、ひとつ思ったことがあります。
私も、書いてみたいな、と。
他人の書いたものを批評するのは簡単だけど、じゃあ自分にはいいものが書けるのか?
これはいつになるかわからないけど、自分の中で勝負してみたくなった。
これだけは、収穫。
最後に細かいツッコミを
さてさて、最後に細かい気になるポイントも触れておきましょう。
会話で、それ言うか?
女同士の会話で、「いずれにせよ」とか「ところで」とか言うか?
あと、「うげげげげげ」とか、言うか?
なんかこういう不自然な感じも、小説世界に入りにくいポイントなのかもしれない。
「無理ゲー」ってほどでもない
3人中2人は、彼氏できるし。
さてさて。
次のはあちゅうは既にスタンバイしてます。
『仮想人生』
ちょっと楽しみです。
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