こんにちは、ドクダミ淑子です。
本業が少し暇になった&外出自粛で時間が出来ました。
そういう時、時間の余白を、読書で埋めたくなります。
ということで、時短営業中の書店に行き、フラフラと棚を見渡して買ったのが、こちら。
BUTTER(バター)です。
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ちなみに、もう1冊悩んだ本がありました。
目立つ位置に陳列された、こちら。
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中国で発生した謎のウイルスが東京を襲う―的な、10年前に書かれた「予言書」として話題になった本のようです。
なんとなく、気が滅入りそうで買わなかった。
BUTTERのあらすじ
公式サイトによると、こんな内容です。
男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。
「木嶋佳苗事件の闇について、柚木さんでなければ描けなかった。この本を読んで、女性と話をするのが怖くなった。」(佐藤優氏)
おいおい、木嶋佳苗事件って書いちゃってるじゃん!
そう、これは「木嶋佳苗事件をモチーフにした、女性たち・そしてそれを取り巻く男性たちの物語」です。
ちなみに私が買った文庫本のオビは、こんな感じ。
小説として、楽しむことにする
木嶋佳苗事件のことは、あまり詳しく知りません。
でもここは、事前に調べたりせず、全く別の物語として楽しんでいくことにしました。
実際に、今ちょっとだけWiikipediaを読んでみたけれども、似ているようで別の事件だなと思った。
料理の描写で胸が躍る
この本はタイトルが『BUTTER』というだけあって、モチーフとしてバターの描写が沢山出てきます。
まずは、主人公の町田里佳が、東京拘置所の梶井に会いに行った時のこと。
ガリガリで、食に興味のなさそうな理佳。
その前に、友人にお使いを頼まれてバターを買うシーンがあったけれども、バターがなかったので代わりにマーガリンを買っていったというシーンもあったんですね。
そんな理佳に対して、梶井は「バター醤油ご飯を食べなさい」と指示を出すんです。
理佳は律儀に炊飯器を買って、ご飯を炊いて、バター醤油ご飯を楽しみ・・・そこから物語はどんどん展開していきます。
バター醤油ご飯、たらこパスタ、パンケーキ、バタークリームのケーキ、ジョエル・ロブションの1人フルコース、ガーリックバターライス、カトルカール(バターたっぷり焼き菓子)・・・色々とそれぞれを口にするまでのストーリーと、その描写、食べた瞬間に主人公は何を思い、梶井の何に触れたのか、そして次の行動は・・・
・・・っていうか、美味しそうなんですけど!!
そう、バターの描写が良すぎて、食べたくなるんですよ。
んもうっ!
私、この小説読んでいる時、人生で初めて「サッポロ一番塩らーめん」の袋めん買って、もやしと玉ねぎ炒めたのと味玉のせて、バター入れて食べちゃったからね!
めちゃめちゃ美味しくて、とろけちゃったからね、どうしてくれるんだ!!
ひょっとしたら、小説メシを作って食べる経験って、生まれて初めてかもしれない。
そのくらい、バターを欲したくなる、危険な物語。
問題から目をそらさず見つめた瞬間、その人の人生は動き出す
そしてもう1つのテーマは、女性としての苦しみ・歪み。
女性だけじゃなくて、その周りの男性の問題もあるんだけど。
犯罪者として収監されている梶井真奈子もそうなんだけど、主人公の理佳が抱えている過去の後悔・罪悪感の話、不妊治療をする友人の玲子、摂食障害、女同士の友人関係、そして容姿への女性目線・男性目線の話、辛い記憶を封印して幸せな過去に生きる人、他人をコントロールする人・他人にコントロールされたがる人・・・物語が進むにつれて、それまで見えなかった色々な問題が出てきます。
時にはぶつかり、時には傷つきながらも、それぞれが自分の「歪み」と向き合った時に、人生が動き出すのです。
これは、ただの問題提起や事実を並べただけではなく、そういう「救い」「希望」みたいなものが見える物語。
女の幸せって?
梶井真奈子は、「女の幸せ」についてを理佳に滔々と語ります。
私も、その話を読んでいると、「・・・そうかも」と思ってしまいました。
でも、結局、物語が進むにつれて、理佳の考えも、それに触れている私の考えも変化していきます。
最後には、それぞれの女が、自分の物語を描き、歩みだす。
ふと手に取った本でしたが、ここまで「人との関わり」について考える内容だと思わなかった。
とてもいい出会いが出来た、1冊でした。
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