ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

【本感想】BUTTER 人は誰でも歪んでいるのだ

こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

本業が少し暇になった&外出自粛で時間が出来ました。

そういう時、時間の余白を、読書で埋めたくなります。

 

ということで、時短営業中の書店に行き、フラフラと棚を見渡して買ったのが、こちら。

BUTTER(バター)です。

 

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BUTTER (新潮文庫) [ 柚木 麻子 ]
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ちなみに、もう1冊悩んだ本がありました。

 

目立つ位置に陳列された、こちら。

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首都感染 (講談社文庫) [ 高嶋 哲夫 ]
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中国で発生した謎のウイルスが東京を襲う―的な、10年前に書かれた「予言書」として話題になった本のようです。

なんとなく、気が滅入りそうで買わなかった。

 

 

BUTTERのあらすじ

公式サイトによると、こんな内容です。

 

男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。

「木嶋佳苗事件の闇について、柚木さんでなければ描けなかった。この本を読んで、女性と話をするのが怖くなった。」(佐藤優氏)

 

おいおい、木嶋佳苗事件って書いちゃってるじゃん!

そう、これは「木嶋佳苗事件をモチーフにした、女性たち・そしてそれを取り巻く男性たちの物語」です。

 

ちなみに私が買った文庫本のオビは、こんな感じ。

f:id:dokudamiyoshiko:20200530091832j:image

 

 

小説として、楽しむことにする

木嶋佳苗事件のことは、あまり詳しく知りません。

でもここは、事前に調べたりせず、全く別の物語として楽しんでいくことにしました。

 

実際に、今ちょっとだけWiikipediaを読んでみたけれども、似ているようで別の事件だなと思った。

 

 

料理の描写で胸が躍る

この本はタイトルが『BUTTER』というだけあって、モチーフとしてバターの描写が沢山出てきます。

まずは、主人公の町田里佳が、東京拘置所の梶井に会いに行った時のこと。

 

ガリガリで、食に興味のなさそうな理佳。

その前に、友人にお使いを頼まれてバターを買うシーンがあったけれども、バターがなかったので代わりにマーガリンを買っていったというシーンもあったんですね。

そんな理佳に対して、梶井は「バター醤油ご飯を食べなさい」と指示を出すんです。

理佳は律儀に炊飯器を買って、ご飯を炊いて、バター醤油ご飯を楽しみ・・・そこから物語はどんどん展開していきます。

 

バター醤油ご飯、たらこパスタ、パンケーキ、バタークリームのケーキ、ジョエル・ロブションの1人フルコース、ガーリックバターライス、カトルカール(バターたっぷり焼き菓子)・・・色々とそれぞれを口にするまでのストーリーと、その描写、食べた瞬間に主人公は何を思い、梶井の何に触れたのか、そして次の行動は・・・

 

・・・っていうか、美味しそうなんですけど!!

 

そう、バターの描写が良すぎて、食べたくなるんですよ。

んもうっ!

 

私、この小説読んでいる時、人生で初めて「サッポロ一番塩らーめん」の袋めん買って、もやしと玉ねぎ炒めたのと味玉のせて、バター入れて食べちゃったからね!

めちゃめちゃ美味しくて、とろけちゃったからね、どうしてくれるんだ!!

 

ひょっとしたら、小説メシを作って食べる経験って、生まれて初めてかもしれない。

そのくらい、バターを欲したくなる、危険な物語。

 

 

問題から目をそらさず見つめた瞬間、その人の人生は動き出す

そしてもう1つのテーマは、女性としての苦しみ・歪み。

女性だけじゃなくて、その周りの男性の問題もあるんだけど。

 

犯罪者として収監されている梶井真奈子もそうなんだけど、主人公の理佳が抱えている過去の後悔・罪悪感の話、不妊治療をする友人の玲子、摂食障害、女同士の友人関係、そして容姿への女性目線・男性目線の話、辛い記憶を封印して幸せな過去に生きる人、他人をコントロールする人・他人にコントロールされたがる人・・・物語が進むにつれて、それまで見えなかった色々な問題が出てきます。

 

時にはぶつかり、時には傷つきながらも、それぞれが自分の「歪み」と向き合った時に、人生が動き出すのです。

これは、ただの問題提起や事実を並べただけではなく、そういう「救い」「希望」みたいなものが見える物語。

 

 

女の幸せって?

梶井真奈子は、「女の幸せ」についてを理佳に滔々と語ります。

 

私も、その話を読んでいると、「・・・そうかも」と思ってしまいました。

でも、結局、物語が進むにつれて、理佳の考えも、それに触れている私の考えも変化していきます。

最後には、それぞれの女が、自分の物語を描き、歩みだす。

 

ふと手に取った本でしたが、ここまで「人との関わり」について考える内容だと思わなかった。

とてもいい出会いが出来た、1冊でした。

 

 

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