こんにちは、ドクダミ淑子です。
これは、先月の話です。
※多少の変更を加えています。
新卒向けの合同企業説明会
私は20新卒向けの合同企業説明会に行きました。
合同企業説明会とは、各社がブースを作り、椅子を並べて、着席した来場者に自社の事業や採用情報の説明をする場所です。
私が行く目的は、出展企業のサポートをするためであり、学生の「回遊」を促すためであります。
後者の「回遊」についてですが、後半戦になっている今、こんな学生が増えています。
- 何をしていいかわからず、立ち尽くしている
- 出展企業一覧や会社パンフレットを見て、考え込んでいる
- 目が死んでいる
一体何をしに来たのか・・・と思うかもしれませんが、結構多い。
そんな子達の話を聞き、「とりあえず話を聞いてみようよ!」と言うことも、自分のミッションとして考えています。
今回、印象に残った1人の学生がいました。
「行きたい業界があるのに行き詰まっている」という男子学生
その男子学生は、出展企業一覧を開きながら立ち尽くしていました。
その目は何かを見ているようには見えず、宙をボーっと眺めています。
「何かお困りですか?」と、私は声をかけます。
「ホテル業界に行きたいのに、なかなか受からずに行き詰まっているんです。今日もホテルとか旅行とかって出てないし・・・」
「そうでしたか。・・・なぜ、ホテル業界を志望してるんですか?」
「ファーストフード店でバイトしてて、接客が楽しいなって思って。だからホテルのフロントがしたいんです」
こういう学生は結構多いのです。
自分の中では行きたい理由が明確なつもりだけど、企業側からすると、「なぜハンバーガーとホテルが繋がるの?」ってなる。
そして彼はきっとその「なぜ?」を面接の場で繋げられてはいないのでしょう。
私に言えるのは「色々見てみよう」だ
「そうなんだね・・・じゃあ、接客・サービス業って感じで、少し幅を広げて探してみたら?この辺はサービス業がたくさんいるから、このゾーンに行ってみるといいんじゃないかな?」
「わかりました」
まだ浮かない顔で、彼は歩き出しました。
私に言えるのは、「色々な会社を見てみよう」だけです。
「あなたには、この会社がいいと思うよ!」ではありません。
職務的にというのもありますが、ちゃんと自分で探してほしいから。
固まった視野は、なかなか広がらない
さて、1時間くらい経って、また会場で彼を見つけました。
まだ浮かない顔をしています。
「今聞いてきた会社は、自動車販売店で、接客があるのはわかったけれども、興味が持てない」
「そうですか」
「時代は車離れとか言われているし。自動車は事故だってあるし・・・・自分、自動車に興味が持てないんです」
「興味が持てない」か・・・。
だから新卒だとBtoBのメーカーとかが苦戦するんですよね。
面白い事業をしている会社なんてたくさんあるのに。
やりたいことに縛られているのは、もったいない
さて、そんな話を会場の片隅でしていると、私の担当企業の人事の人がやってきました。
「ドクダミさん、この方は?」
「サービス業をこれから見ていこうと思っているそうです」
「ホテル業界を中心に受けていたんですけれども、うまく行かなくて。もう少し幅を広げていこうと思うんですが、どの業界も興味が持てなくて・・・」
その人は、介護サービスの会社の人事でした。
「介護サービスは?」
「興味がないっていうか・・・よく知らないし・・・」
「そうか。君は行きたい業界がちゃんと決まっているのは素晴らしいと思うよ。でも、それだけに縛られているようで、もったいない! ウチの会社だけじゃなくて、ここにはたくさんの会社がある。営業だって事務だって販売だって管理や技術の仕事だってある。それを1つも見ないのは、もったいないよ。」
そう言って、人事の方はにっこり笑い(私も大好きな笑顔)、ポンポンと肩を叩いて去っていきました。
彼は、また歩き出しました。
とぼとぼと見えましたが、でも少し目線が上がって、周りをみているようにも見えました。
別れ際の彼は、見違えるようだった
そしてさらに数時間後。
彼は、まだいました。
そして、介護サービスの会社のブースに着席していたのです。
人事の方の話を聞き、メモを取り、時々にっこり笑う。
・・・ちょっと変わった気がする。
「ありがとうございました」
ブースを後にする彼を、私は追いかけました。
「お疲れ様、どうだった?」
私は彼が振り向いた瞬間、涙が出てしまいそうになりました。
なぜなら、帰り際の彼は、とてもいい顔をしていたからです。
「今日は来てよかったです。自分の視野が狭くなっているのに気づけたし、いろいろな会社の話を聞けて、もう少し自分自身の可能性を広げてみようと思いました」
「よかった・・・。あなた、今、すごくいい顔しているよ。その笑顔で頑張ってね」
「ありがとうございました」
彼は軽く頭を下げて、そして帰っていきました。
あれから幾日か経ちました。
彼は今もいい顔をしながら就活をしているかなんて、もう分かりません。
でも、あの一瞬、彼は確かに1歩を踏み出したと、私は思っています。
就活の是非を問うよりも、そのルール内で元気になれる人を増やしていく
就活ビジネスというと、どうしても日本の「負」の側面に見られてしまうことが多いです。
「新卒一括採用の是非」とか、「年功序列がどうのこうの」とか、「画一的に学生をさばいてどうのこうの」とか「学歴フィルターがどうのこうの」とか。
件の彼だって、そもそも「就活というシステム」がなかったら、あそこまで暗い顔をしていなかったかもしれません。
私にも思うことはあるし、そういう「就活の作法」から外れてしまった人をどうやって救うことができるかなんて、わからない。
私には、「システム」「制度」がどうだかなんて、どうしようもないからです。
私にできるのは、私の2つの手のどちらかで、1人1人の背中を押すことだけ。
それは全力でやろうと思う。
システム・制度・慣習・見えない障壁がどうであろうと、目の前の一人ひとりの学生の意識を変える・・・それだったら、私にだってできる。
ドクダミ自由帳は今日で2周年です
さて、今日は7月1日。
ドクダミ自由帳は、今日で2周年を迎えました。
2年経ったからどうなのか?と聞かれると、記事が730記事になったねということくらいなのですが・・・
まぁ、これからもゆるゆると続けていければいいかな。
今後とも、よろしくお願いいたします。
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