ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

どうして自己犠牲がないと仕事が成り立たないと思ってしまうのか

f:id:dokudamiyoshiko:20181129001820j:plain


こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

私は普段、営業として企業の経営者や人事と組織・人事制度・教育・育成などなどのお話をし、最終的に募集・採用関係のサービスを提案してお金をいただくという仕事をしています。

せっかく採用しても辞めてしまうと、商売的には美味しいですが、個人的には悲しいので、サービスの提案前の部分「どうして人を採用しなければいけない状況になっているのか?」をがっつり聞くようにしています。

 

さて、今回のお話はその中で「意識が高すぎて、ついていけなくて辞める人が続出、その結果人手不足」になっている企業のお話です。

 

 

「子どものためなら」という保育園副園長

ある日の夕方17時、訪問したのは、駅から2キロほど離れた住宅地の中にある、小規模な保育園。

保育士さんが2名、8月末で急に辞めてしまい、そこから3ヶ月近く採用ができず、保育士の資格者を採用しなければ、経営が成り立たないくらいのまずい状況になっているという話です。

そんな話をしながらも、ちょこちょことお迎えに来るお母さんと会話をし、また打ち合わせに戻る・・・の繰り返しです。

 

「何で辞めてしまったんですか?」一応密室だったので、私はズケズケと聞きます。

「保育園って、どうしても残業ってあるじゃないですか?あとは書類仕事とか、行事の前は準備とか・・・でも、辞めてしまう先生は『子どものために、そこまでやるの?』って言うんです。」

 

・・・ああ、嫌な予感がする。

そこからは、今までのストレスがたまっていたのか、一気に堰を切ったように喋り出しました。

 

「夜だって、ウチは20時までですけれども、お母さんの迎えが遅ければ、21時・22時くらい待つことだって、あります。シフトによっては、その次の日は朝7時~っていう勤務だってあります。でも、しょうがないじゃないですか」

「子育て中の先生もいますから、お子さんが急に熱を出すこともあります。そういうときに、『今日出てこられる?』ってみんなで調整するのも、ありますよね?そういうのも嫌がる人がいるんです。」

「正社員なら、早番・遅番どちらも入れる人じゃないとダメですね。当たり前でしょ?」

「『仕事だから、やります』とかいう人はダメだと思うんです。やるならば、子どものために覚悟を持って臨んでくれる人じゃないと。」

「他の園の園長先生と話をすると、みんなこれは『子どものために、当たり前だ』って言っていますよ」

 

・・・人手不足な理由が一気にわかりました。

この副園長先生と、生き残っている先生たちの意識がとても高く、その他の先生は付いていけないのです。

 

 

これぞまさに「やりがい搾取」なんじゃないか?

この先生は、本当に仕事が好きで、子どもが好きで、子どもたちの為に何でもやるつもりなのでしょう。

でも、仕事は好きだけれども、そこまで意識高くできるわけではない先生もたくさんいます。

そういう先生は、ノーメイクで髪の毛もボサボサ、服も適当でギャルでもないのにヘソが見えている副園長先生を見て、どう思うのだろうか?と思いました。

 

保育士不足と言われている原因の一つがここにあります。

実は、保育士の資格者はたくさんいるのです。

でも、「保育士はきついから、もうやりたくない」「保育士の仕事と家庭は両立できない」と思う人が多いから、保育士不足は解消できないのです。

意識高い人の集団は大いに結構ですが、どうしても採用できない状況で、何をしなければいけないのか?

この先生は自分の考えが正しいと思うあまりに、「何かを変える」ということができない状態でした。

 

 

この保育園の、何がダメなのか?

この園のどういう点がダメな考え方なのか?を私なりに書いていこうと思います。

 

「仕事の切り分け」ができていない

先生の仕事を、「保育園運営に関わる全部」にしている点がまず挙げられます。

書類仕事・行事の準備物の作成・朝の登園・夜の延長保育・掃除・洗濯・・・全部先生の仕事という感覚が古いなと思いました。

子どもと接する時間を最大限取ろうとすると、「雑務」は後回しになり、それが残業の元になります。

掃除機をかけるのすら、「保育士の仕事」と言いきっちゃうのは、少なくとも保育士ではない私には、理解できませんでした。

だって、子どもと接しているわけじゃないじゃん。

 

業務の切り分けをして、先生じゃなくてもできる仕事をやってくれるスタッフを配置したらどうですか?それだけで楽になりますよ!と言いたくなりました。

実際に言ったら、「私たちは保育士資格者の数で補助金をもらっていますから、そういう事務スタッフを抱えることなんて、できません!」とキレられました。

  

「残業は当たり前」「残業=子どものため」という残業の肯定

今の様々な事情を抱えながら働く世の中で、「残業は当たり前」「残業は仕方ない」という考え方は、もう時代遅れです。

しかも、残業する理由を「子どもの為を考えたら、残業せざるを得ない」と、保育士のやりがいである、子どもの成長・笑顔などに結び付けているのが、タチが悪いです。

 

お母さんの迎えが1時間遅れるというのも、「仕方ない」ではなく、「どうにかしなければ」の問題なのです。

こういう考え方だから、お母さん側も「この園はちょっと遅刻しても大丈夫」ってなっちゃうんじゃないの?

 

シングル・ハラスメントになっている

お子さんの急な発熱で休み・・・これは仕方がない。

でも、だからと言って「今日来られる?」が連発すると、ストレスたまりますよね。

独身の先生にしわ寄せが行っている現実を「仕方ない」で済ませるのは、ちょっと違うと思うのです。

 

「当たり前」「仕方がない」で変える気ゼロ

あとは、なんでも「この世界では当たり前」とか「仕方ない」とか言って、変える気が全くないところも、怖いなと思いました。

現状ピンチということは、今までのやり方を変えることを考えなければいけない状況なのがわかってないのでしょうか?

 

 

自分を犠牲にして、お客様のためにって思考は、早く滅びてしまえ

保育士さんは、それは社会的意義のある仕事です。

でも、だからと言って自分の生活を犠牲にして、長時間働かなければいけない、それが保育士の仕事だというのは、少し違う。

「自分の犠牲がないと仕事が成り立たない」なら、そもそもの仕事の成り立ち方が問題なのです。

 

この副園長先生は、何を言っても全く変わらなそうな「自分の信念」にあふれていたので、状況が良くなることを遠くから祈ることしかできませんが、「やりがい」や「お客様のためなら」で自分を犠牲にして働き、そこから快感を得る人が、1人でも減るといいなぁと思って、この文章を書いたのです。

 

 

こちらもどうぞ 

www.dokudamiyoshiko.com