ここは、とあるチェーン展開している焼肉店・牛丸。
クリスマスイブの今日は、いつもよりも客が少なく、空席がちらほら見える。
そんな中、肉の焼ける音に混ざって、高い声が店内に響く。
「あーあ、まさかイブにケンタと二人で牛丸にいるとか、ありえないんだけど」
「は?だって俺のこと呼んだの、お前じゃん」
「だって、ケンタ暇そうだし」
「暇じゃねーし」
「え?なんか予定あったん?」
「ないけど・・・」
「じゃあ暇じゃん」
「お前もな」
「お待たせしましたー、牛タンねぎてんこ盛りでーす」
「あ、私牛タン好き!早く焼こっ!」
「焼き肉って、なんでこんなに幸せになるんだろうねー?」
「さぁ・・・」
「私、焼き肉大好き!」
「ふぅん・・・」
「何でケンタと一緒なんだろ?」
「しつけーな、自分から誘ったんだろうが」
「でもさ・・・ミカは先輩と温泉行ってるんだって。いいなぁ。ロマンチックじゃない?温泉。」
「あのなぁ、温泉とか言って、男はエロいことしか考えてないからな」
「へぇ・・・ケンタも?」
「へぇあっ!?そんなことねーけど」
「そうなの?」
「いや、俺も男だし」
「そうなの?」
「・・・・・・」
「あ、肉焦げちゃうよ、早く食べて!はいっ!!」
「ケンタはさぁ、理想のクリスマスとかある?」
「別に・・・」
「私はさぁ、やっぱイルミネーションとか見たいよね。で、手つないでさ。一緒に寒いね、でもきれいだね、とか。」
「ポケットに手入れたりすんのか?」
「そんなベタなの、妄想にはいってなかったわ。でもあったかいならいいかも」
「お待たせしましたー!カルビ一本壺漬けでーす。焼けたらー、こちらのハサミで切ってお召し上がりくださーい」
「クリスマスって言ったらさ、なんかナイフとフォーク使って食べるやつを想像してたけど、こういうのも、いいかもね」
「カルビ、うまいよな」
「結構食べたよね」
「お前、実は結構食うよな」
「普段はあんまり大食いバレないように抑えてるからね。今日は特別!」
「特別・・・」
「失礼しまーす、まもなくラストオーダーでーす」
「え?そうなの?どうする?」
「どうするって・・・」
「あ、ちょっと待っててもらってもいいですか?」
「かしこまりましたー!後ほどお伺いしまーす」
「どうしようかな・・・牛丸アイス食べるかどうか・・・」
「アイス?この寒いのに?」
「寒いのに食べるアイスが最高だし。でも、クリスマスイブだから、ケーキもいいよね」
「ケーキなんて牛丸にあんのか?」
「うーん、ないよね・・・どっか別の店行く?」
「でももう12時近くだし」
「え?じゃあクリスマス本番じゃん!」
「・・・」
「ドニーズだったら、ケーキあるよね?ドニーズ行こう」
「ドニーズって遠くね?電車乗るし」
「そっかぁ・・・しかも行ったら終電なくなるよね」
「ラストオーダー、お決まりですかー?」
「あ、やっぱりナシで」
「かしこまりましたー」
「どうする?」
「どうするって何を?」
「だから、次だよ次」
「ケーキ食いたいの?」
「うん」
「じゃあ・・・・俺んち来る?コンビニでケーキ買って食えば?」
「いいの?」
「別にいいけど・・・」
「・・・何?エロいこと、考えてんの?」
「ぶぉっ!?そんなわけねーじゃん」
「・・・・・・」
「な、なんだよ!?」
「ふふっ」
「だから何だって!?」
あー、私がブスじゃなかったらなぁ・・・
と、日本酒をちびちび飲みながら、パソコンに向かってにやにやした、金曜の夜なのでした。
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