こんにちは、ドクダミ淑子です。
これは少し前の話です。
ある時期、ものすごく仕事のできない男性が入社してきました。
ビックリするほど仕事ができない
営業として入社してきたその人は、劇的に仕事ができませんでした。
1つの書類を作るのに、ミスを多発し、最低3回は直しを入れないと、お客様に出すレベルにはならない。
同じ話しかできず、お客様に突っ込まれたときに切り返せず固まる。
人の気持ちが全く分からず、お客様に平気で失礼なことを言ってクレームになり、担当変更を要望される。
とにかく色々ありましたが、大体以下の3つのポイントが出来ていないということに気づきました。
論理的に考えられない
私が仕事の中で提供するサービスは、「例外」が結構たくさんあるのです。
「AかつBの条件を満たす顧客が、C商品を利用するときには、Dの特典が付く」
こういうものが、ちらほらあります。
しかし、彼はすごく飛ばしてしまうのです。
「AならばDの特典が付く」・・・いやいや、B・Cを満たさないと付かないでしょ?
「C商品を利用するときには、Dの特典が付く」・・・いやいや、A・Bどうした?
「Dの特典が付きます!」・・・条件どこ行った!?
こんな感じで、とにかくA→Bくらいの式しかわからないのです。
でも彼は、有名かつ卒業するのが大変な大学をきちんと卒業しているし、会話をしている限り、そんなに頭も悪くなさそうなのに・・・と不思議でした。
きっと私の説明の仕方が悪いんだ、そう思っていました。
人の気持ちがわからない、人のタイプに合わせた対応ができない
彼はお客様や同僚にサラリと失礼なことを言ったりするクセがありました。
それで相手がムッとしても、気づかないで話し続けます。
お客様からクレームを言われることもありました。
また、人によって対応を変えたほうがいいこともあります。
同じ内容でも、毅然とした態度で言うのが良い場合もあれば、下手に出て言うほうが良い場合もあります。
でも、彼は人によって対応を変えることができず、どんな時でも毅然とした態度でしか言えないので、それで更にこじれることもありました。
逆算して物事を考えたり、方向転換ができない
締切から逆算して物事を考えるということもできませんでした。
だから、いつも前日になってやっていないことに気づき、深夜までの残業。
私もよくそんなミスに付き合っていました。
また、順調に取引が進んでいる中で、急にそのレールからそれた場合、彼はどうしていいかわからず、混乱していました。
数日後に対応してもらえるのなら、 またスケジュールを数日ずらして引き直せばいいのでは?と言っても、最初からやり直さなければ・・・と焦っていました。
もしかして、これが発達障害というものなのでは?
そんな彼に付き合いながら、行動パターンを見ていて私は思ったのです。
「もしかして、これが発達障害っていうものなのではないか?」
そう思ったら行動素早く、私はこんな本を即買い、読みました。
アスペルガー症候群 (幻冬舎新書) [ 岡田尊司 ]
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読めば読むほど、彼のことを言っていると感じる本でした。
上司に相談してみる
そしてその本を読んで、気になるところにマーカーをガンガン引いた後に、上司にその本を渡し、数日後話し合いました。
私が声をかけるまでもなく、上司も気づいていました。
上司と私は、二人で話し合い、彼が理解しやすいような指示をしていくことで、少しずつ慣れてもらおう、という結論になりました。
違うことを言うと混乱してしまうと思い、上司と相談しながら、私たちの指示や指導の仕方を統一していきました。
彼は仕事を辞めることにした
しかし、そんな私たちの歩み寄りもむなしく、後輩は「これ以上この会社で頑張っても無理」という結論を出し、退職届を出しました。
そして、転職活動を始めました。
確かに、例外が多いこの仕事、人に合わせた対応が求められる営業の仕事は、彼にとっては分からないことだらけで、苦しいでしょう。
毎回同じ仕事を繰り返すほうが、絶対に楽ですし、そっちの方が向いている。
営業の仕事じゃなければ、きっと彼は活躍できる・・・!
そう思った私は、彼に聞きました。
「どういう仕事を探しているんですか?」
「とりあえず・・・営業っすね」
え・・・?
なんでだろう?
何で彼は営業をしたいのだろう?
こんな例外とケースバイケースの塊みたいな仕事を、どうしてやりたがるんだろう。
支援センターの人に相談してみた
そんなモヤモヤを持った私は、知り合いの発達障害者支援センターの人に相談してみました。
こういうことを言ったりやったりする人がいること、今までこういう事件が起こったこと、彼が仕事を辞めるといって、また営業を探していること・・・
「どうして、彼は、自分が苦しくなるような仕事を選んでしまうのでしょうか?
私は、彼に営業以外の道を薦めたいんです。
営業以外だったら、きっと彼もこんなに傷つかなくて済むと思うのに・・・」
そこで、支援センターの人が言ったことは、こんな内容でした。
*****
ドクダミさん、その人のことで苦労してきたんですね。
それでも、彼の幸せを願って、なんとかアドバイスをしたい、さすがです。
でもね・・・放っておけばいいんですよ。
彼がいなくなった職場で「変なヤツがいたね、本当に大変だったね」ってみんなでお互いをねぎらって、笑い話にして、残った人で仲良くすればいいんです。
自閉症スペクトラムというのは、幅があって、誰が障害者で誰が障害者じゃないかなんて、一概には決められないんです。
それに、ドクダミさんの会社ではその人は営業として働けなかったかもしれないけれども、世の中にはいろいろな会社があって、彼が活躍できる会社もどこかに必ずある。
そういうところに転職したら、彼は一生、自分の障害に気づかないかもしれない。
そんな人、たくさんいるんです。
大丈夫、本当に彼が障害を持っているとしたら、家族が気づいて、声をかけます。
家族が気づかなくても、この先、何度も何度も仕事が出来ずに会社を辞めたら、自分でおかしいと思って、こういうセンターに来るかもしれません。
そしたらその時に、私たちのような立場の者が、しっかり支援するんです。
まとめ:人は自分の価値観から100%逃れられない
もう数年前の話なのですが、まだハッキリと覚えています。
支援センターの人が言った、「世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな会社がある」ということ。
いつも結構意識しているんだけれども、どうしても自分の周り・自分の価値観には引っ張られてしまうものなんだな、と思いました。
また、「放っておけばいいんです」「笑い話にすればいいんです」と言われたときに、「へ?」となりましたが、確かに私はお節介でなんでも首を突っ込みたがるし、話を深刻にしているんだな、と反省しました。
自分の役割ではないことに、スッと身を引く、それも人との関わりの中で大切なことなんだなと感じた出来事でした。
あの後輩は、今は元気にやっているといいな。
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