こんにちは、ドクダミ淑子です。
以前、「持ちより本棚」みたいなところで本をゲットしているという話を書きました。
積読って読み始めるまでのハードルがどんどん高くなっていくんだけれども、読み始めると段々楽しくなってきて、気づけば通勤電車の中も昼休みも平日夜の空き時間(夫が子どもの歯を磨いている時間など)などの隙間時間にも読みだしてしまう。
なのでとにかく、積読解消には「読み始める」ってことが大事なんだなぁと思う。
・・・といっても、読み始めたからと言って「これはなんだか今の私の読みたい本ではないな」というものもある。
そういうのも、最近は上手く手放すことが出来るようになった気がする。
寂しいけれども、限られた時間の中で読書を楽しむのにはある意味仕方がないことなのだ。
まぁそんな感じで、角田光代ですよ。
昔は割とよく読んでいた作家さんです。
どんな内容なの?
公式サイトによると、こんなあらすじです。
わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が約一億円を横領した。梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。梨花は、果たして逃げ切れるのか? ――自分にあまり興味を抱かない会社員の夫と安定した生活を送っていた、正義感の強い平凡な主婦。年下の大学生・光太と出会ったことから、金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいき、「私には、ほしいものは、みな手に入る」と思いはじめる。夫とつましい生活をしながら、一方光太とはホテルのスイートに連泊し、高級寿司店で食事をし、高価な買い物をし・・・。そしてついには顧客のお金に手をつけてゆく。
「光太と出会ったことから歪んでいく」なのだろうか?という疑念を抱いたけれども、まぁこんなお話ですわ。
宮沢りえさん主演で映画化もしたそうです。
些細なことで、人生が変わる
実家がお金持ちで、自分も生活に困っていない。
お金にも執着しているわけでもない。
夫との関係も上手くいっていないわけではない。
でも、そういう人でも、些細なことで人生が変わってしまう、というのがこの物語の恐ろしさでした。
「夫が自分を見下している気がする」なんてことは別にそこまで珍しいことでもないし、「子どもを産むか産まないか」のやりとりだって珍しくもない。
若い男の子に接して「自分はオバサンなんだな」と実感することだって珍しくもない。
でも、それに様々なきっかけ・タイミングが重なると、一気に人は「堕ちていく」のだ。
といっても、「誰もがそうなる」というわけではなく、梨花は少し極端というか、決めたことはやり続ける、自分の信念に忠実とか、中途半端は嫌いとか、そういう性質がガーっと浪費に突っ走っていったのだろうなと思う。
お金の多寡に幸せを左右される女達
この小説では、「お金があれば幸せ?」という問いを、色々な角度から突きつけてきます。
豪遊する梨花だけではなく、その梨花のかつての友人や、元カレの家庭や、高校の同級生などなど、様々な境遇の人を描くことで、「お金があれば幸せなのか?」と考えさせられる。
そしてその答えは、だいたい「NO」になる。
「自分はちゃんと母親になれているんだろうか」と娘との向き合い方に悩み、ブランド物に身を包んでかっこいい女性を演じ、「ママじゃなくて○○ちゃんって呼んでもいい?」と友達みたいな母娘になったかと思いきや、娘から「たかられる」女性。
自分が親にしてもらったような贅沢な暮らしをさせたいけれども出来ないとため息ばかり吐き、そのうち吹っ切れたように洋服を買い漁るようになった女性。
とにかくお金を貯めて、将来苦労させないようにしないと!と立食パーティーに行って残り物をタッパーに詰める女性。
いくらお金(カード払いや消費者金融での借金も含む)を使っても、逆に節約してお金をどんなに貯めても、満たされない女性ばかりなのだ。
でも、彼女たちは「買う」または「貯める」ことを止められない。
止めたら、今までの自分が否定されたような、というか根本から崩れてしまうような気持ちになるからなのかもしれない。
上記の女性たちにも、パートナーとなる男性はいる。
いるけれども、彼らの影はとても薄いし、初めは暴走していく女性たちに気づかず、取り返しのつかないところに行って初めて気が付くのだ。
そして、「君にはもう子どもを任せられない」だの、「失望した」だの、「裏切られた」だのと言う。
私が女性だからかもしれないけれども、ひどいもんだなと思ってしまった。
そんな男性たちは「お金を使うこと(貯めること)=幸せではない」という共通した価値観を持っている気がする。
お金に縛られる女と、そうではない男・・・という描き方をしているのではないかもしれないけれども、私はそういう読み方をしてしまった。
梨花に贅沢させてもらっている光太はどうなっていくのか?
・・・「愛」を「お金」に換算する女たちと、「愛」のままで持ち続ける男たち。
「お金」の話だと思って読んでいたけれども、もしかしたら「愛」をどう捉えるのか?という物語なのかもしれないな、なんて思った。
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