こんにちは、ドクダミ淑子です。
今回は、こちらの本の感想を・・・
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どんな内容なの?
公式サイトによると、こんな内容です。
変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事をするりさ子。心に傷を持ち身一つで東京を転々とする彼女は、人の温かさに触れて少しずつ変わっていく。
最近、原田ひ香さんの本を読み漁っている。
ドラマみたいな小説が多く、1話完結でもあり、話が繋がってもいる、みたいな感じ。
重すぎず、なおかつ軽すぎずで、「小説が読みたいけれどもまとまった時間がとりづらく、重すぎる内容はしんどいけれども、軽すぎる内容もあまり好きではない」という私の今の要望に合致しているというのが大きいと思う。
そして、読み始めたばかりなので、豊富に「次に読む本」があるのも、ありがたい。
「東京」の多様性を思う
本の感想を書く前に、年末年始で夫の実家に帰った時、夫の実家周辺を見て、ふと思ったことを書こうと思う。
夫の実家は、「住宅地を作るために開発しました!」って場所にあって、駅を降りたら駅前のあれこれがあって、そこを過ぎると家しかなくなる。
コンビニサイズの「商店」みたいなのはあったり、郵便局や歯科や内科があったりもするけれども、いずれも平屋のこじんまりしたサイズで、とにかく「一戸建て」しかないのだ。
駅前に最近できたっぽいマンションはあるけれども、全部分譲マンションっぽいし、賃貸アパートなんてものは全くない。
私の実家も、片田舎に突如現れた200戸くらいの住宅地なんだけど、小学校に行くとその住宅地以外の子もいて、広々とした家の農家だったり、謎に奥まったところにある家だったり、色々な家があった。
30年前にはまだ「ぼっとん便所」の家もあったりして、驚いたのも覚えている。
農家や先祖代々同じ土地に建物を建て替えたり増築したりしながら住んでいる子の家は個性的(といったら語弊があるかもしれないけれども、画一的な住宅が並ぶ自分の家と比べたらそれぞれ違うから、そう表現したくなる)だった。
・・・というのを、きっと小学校を卒業するまで、夫は体感していないのかと思うと、「すごい環境だな」と思ってしまった。
ちなみに中学~高校へ行くともっとお金持ちの子の家や、逆にお金のない家を知り、大学に入るとその「育った環境の差」というのをさらに感じることになるのだが、それはまた別の機会に。
なぜこの話を挟んだかというと、「東京」って、夫の実家のような「ある時期にドカンと作られた都市」とは少し違うなと思ったからだ。
東京でも郊外に行けばそういう場所はあるし、巨大なマンション群とかはそういう感じなのだけれども、都心の大通りをちょっと入ったところに広がる住宅地はそれと違って、まさに「多様性」みたいなものの塊だなぁ・・・と思うのだ。
(やっと、本の感想に戻ってきた。)
「あなたはどうしたい?」を突き詰める
「東京ロンダリング」はシリーズが出ていて、私は今既刊の2冊を読み終わったところ。
1冊目は、主人公が1人で、色々な家に住みながら、少しずつ色々な人と関わりながら、主人公が変わっていくという話。
最初は離婚してボロボロになった女性が、言われるがままに物件を移り変えながら毎日を屍のように生きているんだけれども、ある時ひょんなことで定食屋を手伝うようになり、どんどん「私はこうしたい」が出来てくる。
途中でそういう気力を吸い取られそうになっても、人の助けで自分を取り戻す・・・という、ロンダリングという仕事とそれに関わる人の「浄化」の話。
そして、先に書いたような「東京」の風景があって、それも面白い。
2冊目がなかなか厄介だった。
今後は主役が1人ではなく、様々な人の「ロンダリング」を取り巻く物語ということは変わらないんだけれども、そこに「意識高い系」の話が入ってくるのだ。
「あなたはどうしたい?」という、「自分の意思を確認する言葉」によって、皆が人生が動くようなアクションをするんだけれども、実はその言葉によって自分が動いたと思っているのが、「動かされた」だったということが、最後の方でわかるような話になっている。
自己啓発書を読み漁る若手会社員、自分の人生を語る中で「本当は何がしたいの?」と迷うようになる女性、手相を見てもらってその結果に背中を押される男性・・・
そうやって、自分の「意思」だと思ったことが、実は他人の描くシナリオの1つだった、という話になる。
しかし、このことは読者と一部の登場人物だけが知っていて、当の本人は全く知らない。
いつまでも、自分の意思で人生を切り開いたと思っているのだ。
・・・その恐ろしさを最後にふっと感じる。
ここまで読んだらネタバレ後になると思うけれども、私は最後にこれに気づいて、最初から読み直したい!と思ったので、今から読み人はぜひ、その「自分の意思」と「他人からのコントロール」を意識しながら読み進めていただきたい。
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