こんにちは、ドクダミ淑子です。
以前のブログで、「1冊買いに行ったらなぜか4冊買った」ということを書いたのですが、その時に買ったタイトルだけで手に取ったこちらの本を読みました。
垣谷美雨さんの小説は、読むのは初めてかもしれない。
どんな本なの?
公式サイトによると、こんな内容です。
未婚の母になったりしたら苦労するに決まってる。
でも、子供を産む、最初で最後のチャンスだ。だったら……。
四十歳を目の前にして思わぬ妊娠に揺れる、旅行代理店で課長代理として働く優子。お腹の子の父親は28歳のイケメン部下・水野で、恋愛関係にあるわけでないし、本人にはどうしても言えない。偏見のある田舎の母親やパワハラ上司、不妊治療に悩む同期にも、言えない。しかし、どこからか優子の妊娠の噂を聞きつけた水野とその彼女があれこれまとわりついて嗅ぎ回る。女は出産したら一人前には働けないというパワハラ上司からも意地悪をされ、四面楚歌。産むのか、産まないのか、言うのか、言わないのか。シングルマザーで仕事はどうするのか……。結論が出せずに悩む優子だったが、田舎の同級生やかつて不倫していた上司、兄のブラジル人妻、仕事と子育てを両立する同僚など、少しずつ味方が現れて、揺れながらも、気持ちは固まっていく。痛快で優しい、全ての女性への応援小説。
「社会の目」に屈するのか
この小説は、わりとさらっと「未婚のまま産む」と決めるところからスタートします。
妊娠した直後に、法事で帰った田舎では、「黒人との子」を連れて帰ってきた女性への偏見に満ちた会話や、40代で未婚同士が集まったのに、男子は「まだまだ結婚できる。できれば若い女の子がいいから同級生は嫌だ」なんていう悪気のない言葉(悪気がないから最悪)なんかを受けて、不安にならながらも、「産む」という気持ちはあまりブレない。
周りはああだこうだ言うんだけど、主人公である優子は、産む方向で動いていくのだ。
正確に言うと、上司に「当然会社は辞めるんだよね?」と聞かれたりするとちょっとだけ決意がグラつくんだけど、それでも応援してくれる人が出てきたりして、また強い気持ちで子どもを産み育てることに意識を向ける。
子どもの父親に「あなたの子だよ」と言うかどうかは、最後の最後まで迷うけど。
最初の田舎の法事の年寄りの会話は、控えめに言っても最悪で、その後もワーキングマザーや妊婦を煙たがる会社の上司なんかも最悪なんだけど、そこで「社会のせいで・・・」とウジウジしないで、とにかく前へ進んでいくのが、読んでいて、好感が持てた。
最近、「私が生きづらいのは、社会のせい」「社会からの風当たりが厳しいから○○できない」ってご意見を目にすることが多くて、そういうのを見るたびに、「それは本当に社会のせいだけなのだろうか?」って思っていた。
でも、優子の行動や考えを見ていると、やっぱり社会のせいだけじゃないし、風当たりが厳しいからといって諦めるというのは、社会の圧力に負けたのかもしれないけれども、その人自身が「諦める」という選択をした結果なんだよなぁと思う。
その中で、「未婚の母になる」と決めて色々な問題に立ち向かう優子の強さに、好感を覚えたし応援したくなった。
人と関わりが、誰かのことも変化させる
この小説では、本当に色々なバックグラウンドの人が出てくる。
40歳を目前に妊娠する優子、その部下のイケメン28歳独身男性、女性社員の妊娠を「迷惑だ」と言い放つ上司、共働きだった奥さんを失くした取締役、長く不妊治療をしていたけれども最近諦めた優子の同期、嫁姑問題に悩む姉、家庭を疎かにして離婚を言い渡された兄・・・これよりももっともっと多くの「人」が出てくるんだけど、それぞれが、それぞれの考えで動きながら、それが時には衝突したり、誰かの心の支えになったりする。
その人間模様も、また面白い。
優子が一番欲しかった言葉は、思いもよらないところから貰えたし、優子の妊娠出産で人生が変わった人がたくさんいる。
そうやって、人と人とは関わり合いながら、繋がり合いながら生きているんだなぁということを改めて感じた。
「未婚の母」というテーマなんだけど、優子の心の強さもあって、全体的にさらっと読める、面白い人間ドラマでした。
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