ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

【本感想】三人屋/サンドの女 三人屋 街を作るのは誰か

こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

最近、こちらの2冊を読み終わりました。


 

 


 

 

 

どんな内容なの?

公式サイトによると、こんな内容です。

 

朝は三女・朝日の喫茶店、昼は次女・まひるの讃岐うどん屋、夜は長女・夜月のスナック――

朝・昼・晩で業態がガラリと変わるその店は、通称「三人屋」。
やって来るのは、三女にひと目惚れしたサラリーマン、
出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店主、
女泣かせのスーパー店長など、ひと癖ある常連客たち。
三姉妹が作るごはんを口にすれば、胃袋だけじゃなく、心もたっぷり満腹に!?
心とお腹にじんわりしみる、美味しい[人情×ごはん]エンタメ!

 

最近ちょこちょこ読んでいる、原田ひ香さんの小説。

書店で『三千円の使いかた』のポップを見て、気になっていたんだけれども、まだそれは読まずに、『ランチ酒』から、食べ物がモチーフになっている小説ばかりを読んでいる。

 

感想ブログは書いていないけれども、『まずはこれ食べて』『口福のレシピ』も読んだ。

どれも、美味しそうな料理の描写と、「ああ、こういう人、いるよねぇ」と思うような人物描写の巧みさが面白く、軽い気持ちで読めるのにちょっとだけスパイスというか毒というか、透明な水に真っ黒なインクを1滴たらしたような、ちょっと心をえぐるような仕掛けがあったりする。

 

 

地元民と、余所者と

この小説は、章ごとに、話者が変わってきて、数々の男性の目線で三姉妹が描かれていく(時々三姉妹本人が話者の時もある)。

それぞれ、性格もモノの見方も人の見方も違う人なのに、なんとなく「長女はきっと、こういう人なのだ」というキャラが見えてくるのが、また面白い。

 

1冊目の『三人屋』の方は、もともとラプンツェル商店街に住んでいた人達の目線で描かれている(これも例外はある)。

新たに街に入ってくる人と、それを迎え入れる既存の住民とが入り混じり、時には衝突し時には気が合って仲良くなり・・・という様子がリアルだなぁと思う。

 

そして、2冊目の『サンドの女 三人屋』になると、余所者が話者である章が増えてくる。

ただ、その余所者が、街に居つき、馴染んでいくこともあれば、波風だけ立たせて去っていくこともあるし、大きな傷を残すこともある。

誰が悪いわけではないけれども、人と人とが関わることで、化学反応が起こって、その結果、事件が起こることがある。

 

・・・そういうのが、とてもリアルだなぁと思った。

 

そして「地元民/余所者」の話は、最後の最後に、まひるさんが良い事を言う(読んで欲しいので引用はしない)。

 

街を作っているのは、昔からその街に居る人だけではないのだ。

街は生きているし、街はそこに住む人によってどんどん変化していく・・・

 

そう思うと、新築マンションを買って縁もゆかりもない土地に移り住んだ我々は「余所者」であるんだけれども、居つくうちにきっと少しずつ街に変化をきたしていくのだろうな、と思う。

 

 

ご都合主義で終わらないことがまたリアル

一人一人がまるで実在する人物と思うほどキャラを立てられる著者。

彼女がその腕で小さなコミュニティを描くと、「街は生きている」を強く感じさせてくれる小説ができる。

 

最終的には三人屋は大きく形を変えることになる。

読者としては少し寂しくなってしまうんだけれども、フィクションであちがちな、ご都合主義のハッピーエンドで終わらせないのも、またリアルで、人生だよなぁ・・・と思う。

 

 

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