こんにちは、ドクダミ淑子です。
人生、何があるかわからないし、何がきっかけで動き出すのかなんて、わからないなぁと思うことがあります。
そんな風に思うような話を、ふと思い出しました。
きっかけは、たったの一言
舞台は、夕暮れ時の、東京行きの電車を待つホーム。
30歳くらいの私は、1歳年下の中途で入社してきたばかりの男性と並んで立っていました。
そして、その前には、ペット用のキャリーケース。
新入社員の男性は、それはそれは癖の強い人で、研修の一環で私の商談に同席していたら、帰り道に「アイツ、カネカネうるさくないっすか!?」とかキレ出して、なぜか交差点で私と彼が口論になる・・・というような事件が何度かありました。
その後反省してなぜか丸坊主にしてきて、「坊主頭の営業マンなんてありえない」と上司に怒られていました。
ええ、色々な人が入社してくるのが、私の勤める会社の特徴です。
・・・が、最近は無難な人が増えてきましたね。
私としては、彼くらいパンチが効いている方が面白いんですけどね。
さて、話は戻って、キャリーケース。
私は、その日の商談が終わったという安心感なのか、その面倒臭い後輩と喋りたくなかったからなのか、そのキャリーケースの中の犬を見て、こう呟きました。
「わぁ、かわいい!」
ここから、人生が動き出したのです。
私ではなく、隣にいた後輩男性の。
犬から始まるストーリー
「fufufu… カワイイデショ」
振り向いたのは、外国人の男性でした。
もじゃもじゃの白髪頭でどっしりとしたその人は、振り向いて話しだしました。
彼は、この近辺で英語教室をいくつか経営する社長で、会社は社員に任せられる状態になっているのである程度自由とのこと。
「これから、ナッシオバラに、行きます」
「ああ、那須塩原。いいところですよね」
おもむろにスマホを取り出し、写真を見せる彼。
そこには、暖炉の炎と上質そうな一枚板のテーブルと、ウィスキーグラスが置かれていました。
また別の写真は、小川の見えるテラスとコーヒーカップ。
「わぁ・・・いいなぁ」
どうやら、東日本大震災のあとの原発のあれこれで、安くなっていた別荘を買い取り、買ってからは毎週のように通っているそうです。
その日は木曜日。
木曜の夜からその男性とワンコが別荘に行き、金曜日は1人でリフレッシュして過ごして、土日は家族と合流して、また月曜日からは仕事をする・・・そんな生活をしているようです。
揺らぐ炎を見ながらのウィスキーや小川のせせらぎを聴きながら飲むコーヒーは格別だ、というような話を嬉しそうな顔をしながらする、男性。
「いいですねぇ・・・」
そういう生活なんて程遠いな、今からまだ仕事だもんな・・・と思ってしまう私。
そんな私の心を読み取ったのか、男性はこう言いました。
「私の別荘に、来ませんか?」
ポンと飛び出せる勇気というか何というか
「別荘に・・・?」
彼曰く、とても広い別荘だから、部屋が沢山あって何人泊まっても大丈夫で、那須塩原駅まで新幹線で来てくれたら車で送迎するし、毎週行っているからいつ来てもいいよ、とのこと。
「オレ、行きたいっす!」
ためらう私の隣で一緒に話をしていた、後輩男性がポンっと返事をしました。
喜ぶ、英会話教室の社長。
まもなく、終点の東京駅に到着するというアナウンスが聞こえてきました。
「じゃあ、ここにメール下さい」
彼が渡した名刺には、英会話教室のロゴと、代表という肩書と、カタカナで名前が書かれていました。
「ドクダミさん、行かないんっすか?あんなに”いいなぁ”って言っていたのに」
「うん。私は一応女性だから、気軽に行けないなって思う」
「そんなもんなんすかね?」
「そんなもんだよ・・・ポンと行ける○○君が羨ましい」
「羨ましい」は本心でした。
こうやって、偶然出会った面白い人についていって、面白い経験が出来そうなことって、きっと楽しいんだろうけど、やっぱりちょっとリスクがある。
33歳くらいの私は、そういう世界にポンと飛び込めるほど、警戒心が弱くはなかった(けれども、それは正しいと思っている)。
「ま、いいや、オレ行ってきますわ」
人生、何がきっかけで変わるかわからない
その2週間後くらいの月曜日に、「行ってきたっす」と報告がありました。
「いやぁ・・・本当にすごかったっす!」
彼に見せてもらった写真からは、彼の友人らしき、ヤカラ風の男性たちに囲まれて微笑む社長と、自然に触れながらゆったりと過ごす空気があふれていました。
さて、それからどうなったか?
彼は、私だけではなく、上司ともケンカして、会社をあっさりと辞めました。
facebookだけは繋がっていたのですが、気づいたら親戚が持っていた山を譲りうけ、ソロキャンプ場として開拓するブログを始めていました。
それが、多分5年くらい前。
そして最近ふと思い出して検索したら、彼はその山をキャンプ場にして、一般客を受け入れていました。
あれが直接のきっかけなのかはわかりませんが、影響を与えたことは確かだな。
人生、何がきっかけで変わるかなんてわからないなぁ・・・と思うし、そのきっかけになりそうなタイミングで「行きます!」「やります!」と手を挙げられるかどうかって、やっぱり大事なんだなぁ・・・と、あの時尻込みしてしまった私は、思うのでした。
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