ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

【本感想】猫背の王子 狂おしいほどに魅力的で危険な人

こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

最近の私は、慣らし保育と職場復帰の狭間で、思いがけずニートみたいな生活をしています。

コロナの影響もなく、発熱もなく、順調に慣らし保育終わっちゃったんですよね。

いや、それはめちゃくちゃ良かったんだけど。

保育時間が長くなっても、相変わらず毎朝泣いているし、なんなら出発の45分前くらいから、おかあさんといっしょ見ながらぐずぐずしているけど。

 

そんな感じで、朝に子どもを保育園に送り、ちょっと散歩して帰宅後にYouTubeの筋トレ動画を見ながらやって、午前中は読書、午後はちょっとだけスプラトゥーンをしてから14時頃に家を出て、16時のお迎えまでカフェで読書したりブログを書いたりして・・・みたいな生活。

職場は「事前に面談した方がいいですか?」「来たら説明するので大丈夫!」「・・・わかりました(つまり、私に出たとこ勝負しろということですね?)」みたいな感じだし、思い返せば出産予定日の2週間前くらいに出てきちゃったし・・・これは1年越しの繰り越し休暇だな、と思って開き直っています。

 

そして、今まで読めていなかった本をたくさん読んでいるところ。

スプラトゥーンの誘惑と闘いながら。

 

前置きはこの辺にして、今日はこちらの1冊です。

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どんな内容なの?

公式サイトによると、こんな内容です。

 

自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた――。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主催する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りがミチルからすべてを奪っていく。そして、最後の公演の幕が上がった……。スキャンダラスで切ない青春恋愛小説の傑作。俊英の幻のデビュー作!

 

 

周囲の人を次々と狂わせる女

これは一人称小説、つまり主人公の「王寺ミチル」が、彼女の視点で語るスタイルです。

そのミチルは、周りの人を次々と魅了し、狂わせていく魅力の持ち主。

 

美容師やデパートで勤務している、いわば「普通の女の子」たちは彼女が夜転がりこむ場所となり、謎の老婆も初対面で引き込まれ、女性記者も、家庭教師をしているシングルマザーとその中学生の娘さんも彼女の魅力に心を奪われてしまう。

所属する劇団のメンバーも例外ではなく、長年タッグを組んできた女優も、新人女優も、そして「信頼していた仲間」のトオルも。

 

どうしようもないダメ人間なのに、どうしても惹かれてしまう。

自分のものにならないのに欲しくなってしまうし、一瞬でも自分のものになるならと要求を受け入れてしまう。

・・・そう思わせるような人間が、王寺ミチルなのです。

 

私の今までの人生で、ミチルのような人間には会ったことがないし、きっと今後も接点がない。

出来ることなら、ミチルのような人に会ってみたいと思ってしまう。

 

 

狂わないように、離れていく

でも、彼女の周りの人は、次第に彼女から離れていきます。

 

ベテラン女優は別の劇団へ行き、老婆は死に、家庭教師はクビになり、信頼していた仲間は口には出さないけれども心が離れていっていることを感じさせ、今回の公演がラストなのだという空気を出していく。

 

狂おしいほどに魅力的だけれども、皆、彼女の周りから去っていく。

きっと、「そばにいても手に入らない」という苦しみに耐えられなくなってしまうのだろう。

 

あるいは、「そばにいると、その先に”死”が見えてくる」というのもあるのかもしれない。

一応ネタバレはしないでおくけれども、終盤ではそう思わせるシーンがあった。

 

 

手に入れるって、なんだろう?

でも、そもそも「誰かを手に入れる」って何だろう?

 

人は、自分自身のものであって、誰かのモノでもないし、「手に入れる」なんていう表現は出来ないはずなのだ。

でも、「この人は自分と信頼し合っている」と思うことで、定期的に会う事で、また結婚などの制度を取ることで、なんとなく「手に入れた」って気持ちになってしまう。

 

ただ、ミチルはそういう世界にはおさまらない。

「セフレ」であっても1人ではないし、パトロンもファンもたくさんいる。

支えているスタッフだって、その関係性に濃淡あれども1人ではない。

 

「みんなのものであって、誰のものでもない」と誰もが感じていて、だからこそ虚しくなってしまう。

じゃあ、ミチル自身が「自分のことを思い、大切にしているのか?」というと、そうではない。

彼女も彼女で、舞台の中でしか輝けない自分に、周りが自分に魅了されていてもそれに満足できない自分に、そしてどんどんと去られていくことに・・・嫌気がさしているようにも見える。

 

これも最後で、「常人」とは大きく違う意味での「希望」が見えてきて、自分自身に目が向いてくるという描写があるんだけれども。

 

 

セクシュアリティ小説としても読めます

私はこの小説を、まだ会ったことのない「狂人」について思いを巡らせ、「狂人」自身は何を考えているのか、その周囲は彼女をどう見ているのか?をみたいな観点で読みました。

 

ですが、「セクシュアリティ」について考えるという読み方も出来ると思います。

父親を知らない女性がレズビアンとして数々の女を狂わせる存在になり、時には男から女を奪い、男に求められても受け入れられない・・・その辺りも細かい描写やエピソードが散りばめられていて、考えることもたくさんあるでしょう。

 

・・・と、真面目に書いたのですが、単純に面白く、引き込まれる一冊でした。

今から山本文緒さんの文庫版解説を読み、続編の『天使の骨』をポチりたいと思います。

 

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