ドクダミ自由帳

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【本感想】京都に女王と呼ばれた作家がいた 執着も愛の一種なのかもしれない

こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

先日、こちらの本を読み終わりました。

 

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ので、今回はその感想を。

 

 

どんな内容なの?

公式サイトによると、こんな内容です。

http://www.jimotonohon.com/annai/a1527_yamamuramisa.html

 

「京都で人が殺されていないところはない」
京都に住み、京都の女を描き続ける花房観音が描く、京都に住み、京都を描き続けた、山村美紗の生涯。
今ではあたりまえの、ミステリアスな京都の町の面持ちは、山村美紗の小説とドラマ化された作品からきていると言っても過言ではありません。

1996年、日本で一番本が売れた年、帝国ホテルで執筆中に、ベストセラー作家・山村美紗が亡くなった。
次々にヒットを飛ばし、それでもまだ書きたくて、あふれ出るトリックに手が追い付かない。しかし、いくら売れても賞から見放されている。「賞がとりたい」その強烈な思いから解放されることなく逝った美紗はいま、菩提寺の京都東山・泉涌寺に眠る。墓石に書かれた「美」の一文字が、彼女の凄まじい人生を表す。 

 

山村美紗さんの生涯と、その後の「遺された人達」についてを、同じ京都を描く作家の花房観音さんが追いかけるという伝記的ノンフィクションです。

 

 

山村美紗に触れたことがなく

これは、以前募集した「感想を書いてほしい本募集」で挙げていただいたものです。

 

私は、今まで山村美紗さんの著作に接したことがありませんでした。

2時間ドラマも、「山村美紗サスペンスやっているな」と把握はしていたけれども、見たことは一度もなかった。

それは、彼女が亡くなった1996年は私はまだ11歳で、自分の母親がそこまで2時間ドラマやサスペンスが好きではなかったというところからきているのだと思います。

同じ世代の友人でも、2時間ドラマが大好きっていう子もいて、話を聞いていると、幼少期から母親と見ていたとか、大学生の暇な時期に再放送でハマってずっと観ていたとか、わりと若い頃に接したことがあるんだなと思った。

 

そんな感じで予備知識がないので、小説を1つくらい読んでから感想を書こうかと迷ったけど、とりあえず「知らない状態」で読んでみようかなと思いました。

 

 

執着も愛の一種なのかもしれない

この本を読んでいて、浮かんできたのは「執着」という二文字。

 

山村美紗さんは、作家になること、江戸川乱歩賞や直木賞をとること、長者番付に載ることに、ものすごく執着していた。

それは最期の最期まで変わらず、帝国ホテルのスイートルームで執筆中に亡くなるという、文字通りの、最期まで書いていた人生だった。

 

そして、そんな彼女を、日向から支える男・西村京太郎と、日陰から支える男・山村巍。

彼らはそれぞれ、山村美紗という華やかで魅力的な女性に執着しているように、私には見えました。

それも、彼女が亡くなってからも、しばらくは。

 

 

「かく」とは歴史を塗り替える行為

面白いなと思ったのは、山村美紗さんの死後に、彼女を支えた二人の男性は、それぞれ彼女のことをテーマに「かく」のです。

 

西村京太郎さんは彼女をモデルにした小説を書き、山村巍さんは彼女をモデルにした絵を描く。

その中で、西村京太郎さんの小説は山村美紗さんと恋人関係にあったように書かれていて、それは事実なのかと話題になったようですが、この本を読む限り、彼の「こうなったらいいな」という妄想も織り交ざっていたのではないかと、私には思えた。

 

山村美紗さんが執着していたのは、小説を書くことであって、もしかしたら男性と関係を持っても、持たなくても、どちらであっても気にしないのかもしれませんが。

 

二人はそれぞれ、書く(描く)ということで、歴史を塗り替えようとしたのではないだろうか。

西村京太郎さんは、山村美紗さんと愛し合っていたということを、山村巍さんは、山村美紗さんの夫であり、彼女を支えていたのは自分だということを。

 

 

生きているから執着させることが出来る

そんな遺された男性2人なのですが、彼らは2人とも、山村美紗さんの死後に別の女性と結婚しているんですね。

そこが面白いなと思った。

 

著者は「死してなお思われている」といった趣旨のことを何度も書いているけれども、私はそうではないのではないか?と思った。

三角関係という均衡が保たれなくなったら執着がなくなったからなのか、2人とも小説や絵などで、未練を昇華させてしまったからなのか。

 

90歳ちかくなった西村京太郎さんは、こう言います。

 

山村美紗さん―彼女は、面白い人だったよ。よく怒ってたけど。でも、本当に面白い人だった。うん、面白い人だった。

 

完全に過去形です。

 

後妻の祥さんと並んで著者のインタビューを受ける山村巍さんは、こう言います。

 

やせていて、声も小さい。実態がなさそうなんです。フェアリー的な存在でした。

 

やっぱり過去形。

 

生きてその魅力を振り撒いているからこそ、執着されるものなのかもしれない。

彼女自身が死してなお、2人の男を自分の方向に向けておきたいと願っていたかどうかは、わからないけれども。

 

 

出版業界の内側から出版業界を憂う

私は「執着」というワードが思い浮かんだけれども、著者のテーマは少し違います。

 

著者である花房観音さんが山村美紗さんを書きたくなった理由、それは彼女が日本で1番本が売れた年に亡くなったということが大きいのです。

日本人の娯楽の中で、書籍が大きな存在感を放っていた時代に亡くなり、そして今は書店に彼女の本はほとんど並んでいない。

それを憂い、出版界の中から、出版業界を見つめる・・・というのが著者のテーマです。

 

私はその辺を読んでも、「ふぅん、紙の本じゃなくて電子書籍も便利だもんなぁ」と思ってしまったけれども、そんな私でさえも、この本の素敵な装丁には心奪われるものがありました。

 

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本の内容を伝えるものとしての装丁、それを纏った書籍。

それが当たり前だった時代から、スマホの中に文字データだけが入った時代へ。

20年後にはどんな形で「本」は残っているのだろうか・・・そんなことも、少しだけ考えてしまいました。

 

 

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