こんにちは、ドクダミ淑子です。
トイアンナさんのこのツイートを読んで、ズキューンと来たので、今回はその話をしたいと思います。
「鬱になったので鬱の相談乗れます」
— トイアンナ (@10anj10) March 29, 2021
「いじめにあったので同じ気持ちわかります」
とか絶対にそんなことなくて。
私は性暴力サバイバーだけど被害について相談乗るの下手だし、鬱も回復してきたけど、鬱の人へひどいこと言っちゃいそうになるよ。経験したって同じ経験の人を助けられるわけじゃない。
n=1で知った気になることの危うさ
その前に、私がイラっとしたツイートの話もしておきましょう。
「なんでネントレしないんだろ?」の女医さんのツイートです。
寝ないー!って言ってるママさんたち、なんでネントレしないんだろ?自慢とかじゃなく、うちの子生後2週目から始めたら、1ヶ月経つ頃からは寝かしつけもいらんし、夜泣きもゼロだよ?昼寝も夜寝も時間になるとベッドにポイって置くだけ。ネントレのデメリットってなんなんだろ?
— 女ドクター妊娠記録 (@medvoguelife) March 20, 2021
「ネントレ」とは「ねんねトレーニング」のことで、ざっくり言うと子どもを時間割通りに生活させることで夜は寝かしつけなしでぐっすり寝るようにする手法です。
この方は純粋に「困っているママに伝えたい」というところからこのツイートをしたとのことですが、それにしても言い方があまりにも上から過ぎないか?・・・ということは置いておいて。
このツイートって、自分の子どもがたまたま寝る子だったって話じゃない?
ネントレの成果で寝るようになったかどうかなんて、わからなくない?
3ヶ月でしょ?
しかも、子ども1人だけでしょ?
1人だけ成功したからといって、それがどんな赤ちゃんにも当てはまると思っちゃっているのが、もうアカンと思うんですよね。
n=1(自分の子、しかも1人)で育児を語ることが、どれだけ危ういことなのか。
これはその良い例ですね。
「経験を生かして働く」の難しさ
また別の例を出しましょう。
私は仕事でしばしば、障害者支援施設の職員(支援員)さんにインタビューをしていました。
なぜこの仕事を志望したのかを聞くと、8割はこの答えでした。
「身近な人(きょうだいや親戚)に障害者がいて興味を持ったから」
まず、障害者支援という仕事を知っている人じゃないとたどり着けないことを考えると、まぁこれは変な話ではないですね。
毎回、インタビューの後に、施設長さんに報告するのですが、そこで聞いたのは、こんな話でした。
「身近な人に障害者がいる人は、仕事としての支援とのギャップにつまずく」
やっぱりここでも、n=1の壁にぶち当たるんですね。
「自分のきょうだい(または親戚や友人知人)はこうだった」が、他の利用者さんには当てはまらないことが多いのです。
一言で「障害者」といっても、本当に色々だから。
それを、「自分のきょうだいはこうだった」とゴリ押しする人は、仕事としての障害者支援には向かない。
だから、施設長はその志望理由で来たら、特に柔軟な考え方が出来るかをよく見るとのことでした。
たしかに、そこは重要だなと思ったのを覚えています。
1件だけで知った気になってはいけない
トイアンナさんは、「同じ経験をしたからといって助けられるわけじゃない」と書いていますが、助けられると思っている人は、「自分の経験と相手の経験は一緒だから、自分の経験を生かせる」と思っているということなのではないでしょうか?
でも、それはただの「1つの例」なだけであって、全員にそれが当てはまるわけではない。
だから、どんなことでも「自分の経験した1件」だけで語ることはできなくて、それ以外の膨大な事例を元に学び、自分の経験はそこそこにして、その人に合ったサポートなりケアなりをしなければいけなのです。
これがなかなか、難しいんだけどね。
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