こんにちは、ドクダミ淑子です。
先日、こんな言葉を見かけました。
求人案内に「女性が活躍しています」などと書かれていると、「あっ別にその情報いらないです。」てなるよね……
— キラキラ☆港系ねこ (@KKuresan) February 10, 2021
「女性が活躍しています」と書かれている求人はどんな意図があるのか?
人材業界で12年活躍中だった(現在育休中)私は、そのワードを見ただけでピンと来てしまうのですが、たしかに一般の求職者の方がこれを読んでも「どういう意味なんだろう?」と首をかしげるかもしれませんね。
求人サイト等を見ると、「女性活躍中」「主婦活躍中」「子育てママ活躍中」「20代30代が活躍中」などなど・・・ほにゃららが活躍中というワードはたくさん見かけますね。
一体、「○○活躍中」というワードは何を意味しているのでしょうか?
「○○な人に来てほしい」を匂わせている
1つ目は「○○が活躍中」=「○○な人に来てほしい」という意味です。
現在の法律上女性だけを募集したり、年齢制限をかけた募集をしたりというのはできなくなっています*1。
法律上できないのですが、雇う側の事情も様々あります。
「今の社員の年齢構成上40歳以下が望ましい」とか「男女比を考えると男性(または女性)がいい」などなど。
私たち人材業界の営業は、そういった個社の事情も踏まえつつ、その理由によりけりですが、できるだけターゲットに沿った人を採用できるように求人票の書き方も工夫をしていきます。
時には、「それって、男性にこだわる必要性ありますか?」みたいな意見をすることもあります。
その工夫の中で生み出されているのが、「活躍中」というワードなのです。
「女性募集中」と書くことはできませんが、「女性が活躍している」という事実、現状を伝えるだけなら問題ないとみなされるからですね。
でも、なぜ「活躍中」と書くことが、「その層に来てほしい」を匂わせることになるのか?
2つ目に続きます。
同じ層の人がいると安心材料になる?
2つ目の理由は、そうやって「○○な人がいますよ」と書くことが安心材料になると思われているからです。
例えば 、大学生になって初めてのアルバイトをしようと思った時、こういう求人があったらどうでしょうか?
「大学生が活躍中です」「皆この店が初めてのアルバイト先です」
初めてのアルバイトを考えているときは、きっと安心するんじゃないでしょうか。
「自分と同じ大学生がバイトしてるなら、きっと自分もうまく働けるはずだ」とか、「自分と同じく初めてのアルバイトを受け入れている店なら、自分もちゃんと育ててもらえるはずだ」と思うでしょう。
これと同じように、「自分と同じ女性が働いているなら、きっと自分も活躍できるはずだ」とか、「自分と同じように子育て中の人が働いているなら、安心だ」と思わせたいという狙いが「○○活躍中」には込められているのです。
改めて考えてみると、この誘い方ってすごく日本人ぽいなと思いますね。
似たような人がいるなら安心って・・・よく考えたらあまり根拠がないよね。
時には逆効果になる
ただ、この「○○活躍中」というワードは、良い効果ばかり及ぼすわけではないな思いました。
産休前に営業同士の世間話の中でこんな話をしていたこともありました。
「果たして女性は女性ばかりの職場で働きたいのだろうか?」と。
「女性だからといって、女性ばかりの職場で働きたい人ばかりではなくない?」
「女性だけの職場でトラブルがあったから、今はおじさんしかいない職場で安心するという声もありますね」
「まあ確かにそうですよね・・・私は、女性だけの職場とかって絶対働きたくないですね。面倒臭そうで。働いたことないからイメージとまた聞きだけですけど」
どうしたら、きちんと伝えられるか?
活躍中と書かれたからといって、その層の人が安心するわけではない。
では、どうしたらいいのか?
「現状を書く」に戻ったらどうでしょうか?
「○○活躍中」なんて薄っすらした情報だけではなく、もっと詳しく現状を聞いて、その上で求職者の方にジャッジしてもらえばいいのではないでしょうか?
以前、ある会社の経理の募集で求人票を書いたことがあります。
その会社の経理課は、課長がいて、その下に40代の男性メンバーが2人、そしてパートさんが2人という構成でした。
先方の要望は20代、男性、そして経理の経験がある人。
なぜ20代なのか?なぜ男性なのか?なぜ経験者なのか?・・・その理由を詳しく聞きました。
すると出てきたのこんな話。
「自分達は20代後半ぐらいで会計事務所からこの会社の経理に転職してきた。事業会社の経理になったのは初めてだったが、先輩の助けも借りながら少しずつ知識を身につけていき、会社とともに成長してきた」
「20年近く働いてきて、今、この会社の今後の20年を考えた。20年後にはもう自分たちはこの会社にはいない。そうすると、この会社の20年後を支えてくれる人を今採用しなければいけない。そう考えたので20代をどうしても採用したい」
納得感のある話ですよね。
なぜ男性がいいのかという話はここで省きます。
さて、ここまで聞いてどうするか?
もちろん私は「20代が活躍中です」なんて匂わせるような書き方はしません。
上記の話をそのまま書くのです。
採用したい理由をしっかり書くことで、どういう人が欲しいのかというのを伝えられるじゃないか。
ここまで理由を書けば、「若者活躍中」「幹部候補生募集中」なんてワードを書かなくても、20代が欲しいということも、将来の会社を引っ張ってくれるような人材が欲しいということもきちんと伝わります。
この案件については、結果的に求めている方を採用することができました。
よかった。
ちなみに・・・最初の「活躍中」の話に戻ると、多くの場合は書かれている層の人が欲しいというメッセージになりますので、「活躍中」と書かれていることに当てはまる人は、採用されやすくなる傾向にあると思います。
この話をしている時にもう一つご質問をいただきました。
「アットホームな職場」とは何を表しているのか?その答えはこちら。
ゴリラウーマンがいなくても「女性がほしい」って言われたらこう書くこともあります。女性なら採用されやすい案件だと思います。
— ドクダミ淑子 (@dokudamiyoshiko) February 10, 2021
「アットホームな職場」は、「会社の雰囲気以外にいいところがない」または「学生ノリや社長ワンマンや家族主義など一部の人は心地良いです」になります。
こちらもどうぞ
*1:男女雇用機会均等法と雇用対策法。それぞれ例外事由はあります。