ドクダミ自由帳

モテない精神を持ち続ける既婚30代女、ドクダミ淑子の毎日

【本感想】仮想人生 1人以外全員はあちゅう

こんにちは、ドクダミ淑子です。

 

はあちゅうさんがわりと最近に書いた、こちらを読みました。

 

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『仮想人生』です。

 

 

どんな内容なの?

公式サイトによると、こんな内容です。

 

ネットを知り尽くすはあちゅうにしか描けない、SNSでむき出しになる人間の素顔。
衝撃の裏アカウント小説!

現実世界で「普通の人」でいるために裏での息抜きが必要なんだ。

33歳、ユカ、専業主婦。
人材派遣会社を経営する夫の恭平は、いつも帰りが遅い。
一人で過ごす夜に耐え切れず作った、ツイッターの裏アカウント「人妻の美香」。そこから覗く世界には、表では聞けない欲望と愚痴がうずまいていた。
ナンパ師の「圭太 23歳」、ツイッターにアップした絵が突然注目を浴びる大学生「ナオ20歳」、情緒的な恋愛ツイートが人気の「暇な医大生 21歳」、童貞食いを繰り返す「ねね 42歳」。彼らがツイッターの中で少しずつ交わるとき、現実では、恭平が突然姿を消す――。
失敗も、成功も、人生はふとした出来事で変わる。今を生き抜くための必読書!

 

 「今を生き抜くための必読書!」ですって。

あくまでも私の主観だけど、ここだけは言わせてほしい。

・・・必読しなくても今は生き抜けると思う! 

 

 

全員、はあちゅう、再び

たしかに、ネットを・・・っていうかネットの闇を知り尽くしたはあちゅうさんだから書けることもあるなと思いました。

たとえば、こういうところ。

パクツイ大学生が、元のツイート主からパクりを指摘されたシーン。

 

こういうことを言うやつに限って、本人はブスで、デブで、どうしようもない人生を送っているんだろうな。<中略>このブスはきっと、たった数千のフォロワーを大事にして、鳴かず飛ばずのポエムを夜な夜な考えることに人生を費やしているのだろう。人のツイート見てぎゃあぎゃあ抗議していないで、自分の人生を生きろよ。

ブロックしてしまえば、そいつらは存在しないも同然。

 

ああ、なぜでしょうか?

はあちゅうさんは作家だということもわかっているし、これは小説だということもわかっているのに、このセリフ、普段の本人の言動を見ていると、まるでご本人のコメントのような気がしてしまうのです。

フォロワー数でマウント取って、「このゴミみたいなやつらは」と言って、ブロックする・・・

 

広告会社の仕事は忙しいけれど楽しい。結果が目に見えるし、常に何かとの戦いなところがいい。無我夢中で前に進んでいる感じがある。

幸せというのは強迫観念だ。一度得ると失うのが怖くなる。幸せになりすぎると、きっとそれだけ大きな不幸がやってくるに違いない。だから私は大きく不幸にならないために、自分で自分の幸せを毎日ちょっとずつ傷つけるのだ。 

 

この辺なんかも、はあちゅうさんの普段の姿勢を思い浮かべてしまう。

だからちょっとずつ、毎日エゴサしては自分の悪口を見つけるのだろうか?と。

 

こんな感じで、前回も別の本の感想で書いたんだけれども、登場人物のちょっとした描写に、はあちゅうを感じてしまうのが、私が思う、はあちゅう文学の面白さなのです。

 

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専業主婦への思いが詰まっている

ただし、この中で、一人だけ「はあちゅう」要素が薄い人がいます。

 

それが、専業主婦のユカ(Twitterネームは美香)。

旦那の給料で高級マンションで暮らし、旦那の遅い帰宅を待つ女。

 

私が好きなことは……家でだらだらと海外ドラマを見ること。恭平の帰りを待ちながら、ご飯を作ること。それぐらいだ。それ以外にやりたいことなんて何もない。好きなことなんて、考えたこともなかった。

 

とにかく、つまらない女みたいな描かれ方をしているんですよね。

そして、夫の恭平が突然いなくなって、うろたえるのです。

 

この家の家賃は? 生活費は? 何より私は? 私の将来は? 全部、恭平がいなかったら成り立たない。全部が足元から崩れてしまう。

恭平がいない世界は、何もかもが楽しくなくて、むなしい。 

私なんて世の中から見たら、何も持っていないただの主婦だよ。そして今は主婦と言う立場さえ危ういんだよ。旦那が出て行っちゃって。

自分の人生って一体なんだっけ、って思って。 旦那がいない毎日をどう過ごしていいかわからない。結婚してからの私の人生って、旦那が帰ってくるのを待つだけの人生だったの。 

 

子どもなし・専業主婦をここまでつまらない存在にしているのは、なぜなのだろうか?と勘ぐってしまう。

「専業主婦=旦那に100%、心も体もお金も何もかも依存しきって生きている」みたいなのを読むと、そこまで専業主婦に悪い印象を抱かせているのは、何なのか?と気になってしまう。

 

たしかに、専業主婦だと金銭面は100%依存してしまうかもしれない。

だからといって、「何もない」なんて言うほど心も体もカラッポなのかしら?

専業主婦が、憎いの?

 

はあちゅうさんは、専業主婦だった自身のお母さまに対しては、色々なところで書いていますよね。

経済的自立ができなかったから、仲が悪くてもずっと離婚できなかった、とか。

「結婚=我慢だと思っていた」とか。

 

そういうのを思い出しながら、このユカに対してを読んでみると、作者の「専業主婦に対する思い」、これをユカにぶつけている気がするのです。

ユカに対してだけは、自分の考えよりも、自分の持っている「専業主婦観」を反映させているように思えてしまうのです。

「つまらない女」に見えた、専業主婦の姿を。

 

 

 

希望を見せるのか・・・

まぁそんな感じで、自身のダークな感情とか、専業主婦に対するダークな思いを反映させているように読めるこの小説。

全員裏の顔があって、闇があって、人間って汚いよね~って話で終われば、それはそれで面白いなと思ったのですが、話はそこまでダークになり切れません。

最終的には全員に、ちょっとずつの希望を与えるのです。


ナンパ師の「圭太 23歳」はナンパを控え、鉛筆画の大学生「ナオ20歳」は有名になり、パクツイの「暇な医大生 21歳」は大学生活に精を出し、過食嘔吐で童貞食いの「ねね 42歳」は彼氏っぽい存在ができ、そして「美香33歳」は働きだして料理に自分の生き甲斐を見出す。

 

ああ、落ちるところまで落ちちゃわないのね・・・

ここが「ケータイ小説」なのでしょうか?

 

なんか、とってつけたような希望に、興ざめしてしまうのは、私が嫌な女だからだろうか?

最近『闇金ウシジマくん』ばかり読んでいるからだろうか?

 

でも、人の嫌な部分だけをもっともっと描くところに、はあちゅうさんの作家・・・というか「炎上系インフルエンサー」「誹謗中傷を受けて傷つきながら戦う人」しての経験とか、良さが生きるのではないか?ということが垣間見れたこの小説。

私はぜひ、こちらの感情をもっともっと膨らませて、もっともっとダークな小説を書いてほしいと思いました。

 

 

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