こんにちは、ドクダミ淑子です。
先日、書店でパッと目についたこの本を買いました。
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なぜ目についたか、というと、漫画家の渡辺ペコさんが帯コメントをしていたからですかね。
『1122』は連載の最終回だったかな。
コミックスが早く出てほしい。
どんな内容なの?
公式サイトによると、こんな内容です。
菜々子、38歳。職業、書店員。バツイチ後、出会い系サイトで実際に会った70人に、その人に合いそうな本をすすめまくって、いまは独身。
そんなある日、勤め先の本屋で出会った新しい年下の彼氏は、小学生男子2人の子持ち。付き合うって何? 結婚する意味ってあるの? 私は「お母さん」になるべきなの?
血がつながっていなくても、「家族」になれるのかーー悩み、ぶつかりながらも、人と共に生きることの自分なりの答えを手探りで探し出す、心温まる実録私小説。
この方は書店員さんなんですが、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』という同じく長いタイトルの本も書いていて、今回の本はその続編的な話のようです。
ですが、私は続編から読むぞ。
世の中を難しく考える、生きづらさを感じる人
本が好きな書店員さんなだけあって、文章としてはとても読み易く、スラスラっと読めて、スーッと心にしみていくような文体。
でも、実はその読み易さとは裏腹に、考えていることは「小難しいこと」なのです。
それが不思議。
おそらくフェミニズムとかポリコレとかを結構気にする方だし、差別・偏見にも敏感。
私のような無神経人間と違って、「生きづらさ」みたいなものを感じやすい人だと思う。
そういう人が、ウンコチンコ言いたい盛りの小学生とやりとりをする時、悪口と軽口の境目について考えたり、小学生の両想いについて考えたり・・・というとき、大体がややこしいことになるのです。
とにかく、考えて、考えて、他の人の意見も聞いて、本から学んで・・・ってなってから答えを出す。
そして、その時には小学生はとっくに他のことを考えている。
そんなシーンが沢山ありました。
サポートメンバーと言い切る、距離を取る姿勢
「シングルファーザーと付き合っている」と言うと、単純な人はすぐこういうことを考えてしまうでしょう。
「新しいお母さんになるの?」と。
物語としては、初めは警戒されていたけれども、少しずつ受け入れて、いつの間に「僕のお母さんになって」とか言われて、プロポーズされて、再婚、お母さんになりました!みたいなものを考えるかもしれない。
残念ながら、著者の花田さんは、そんなに単純ではありません。
あくまで自分は、サポートメンバーであるという意思を貫くのです。
時に赤ちゃん時代の子ども達に会えなかったことを惜しみつつ、家族という姿を想像しながら。
そして、彼らの人生に自分が深く影響してしまうことを恐れて、それについても考えているのです。
物事はそんなに、簡単じゃない。
私は、心の壁をぶち破る人間なのだ
この距離の置き方というのが、私とは対極に見えたんですね。
私は以前「心の壁をぶち破る人」と言われたことがあるのですが、来るもの拒まずだし、逆に自分から行くのも躊躇しない。
FF外から失礼しまくるし、逆に来られてもあまり気にしない。
そうやって、入口は広いし、すぐ距離を詰めてしまう。
でも時々、距離が近づいてから気づいてしまうのだ。
「私、この人そんなに好きではない、むしろ苦手」と。
そこからスッと距離を置いたり、時にはバサッと関係を断ち切ってしまう。
大人同士だからあまり波風は立たないで今までやってこれたけど、子供たちにそんなことをしたら、心の傷がつくかもしれない。
でも、彼女は絶対にそういうことはしないし、最初から不用意には近づかない。
そこが私にとって、とても勉強になった。
人間関係をじっくり考えながら、前に進んでいく話
とはいえ、「これは逃げなのでは?」と思うこともありました。
この人は距離を取っているつもりでも、子ども達からすれば、毎週行き来していて、ご飯を一緒に食べて・・・という仲。
「お母さんってこんな感じかな?」と思っているかもしれない。
最初の方で「男3人の生活」と言っていた子が、「4人の暮らし」を他人に見せようとしているシーンなんか、すごくすごく、そういう「願望」的なものを感じてしまう。
敏感な花田さんは、きっとそこも見抜いていただろうけど。
とはいえ、変な悲壮感も、変なお涙頂戴もない、淡々と、でもじんわり語る、日々の暮らし、そして書店員としての仕事ぶりなどがとても心に残る、いい物語だったと思いました。
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